『孫子の兵法』と『街道をゆく』 初めから私事で恐縮ですが、私は仕事や人生に行き詰まりを感じると、そのソリューション(解決策)を求めて、いわゆる「古典」の世界に遊びます。 その中の一つに、『孫子兵法』があります。 例えば、「彼を知り己を知れば百戦殆うからず。彼を知らずして己を知るは一勝一敗す。彼を知らずして己を知らずは戦えば必ず破れる。」という地形編の中に書かれた文章があります。 これは、有名なことわざ「敵を知り、己を知れば、百戦殆うからず」とされておりますが、私にとっては、まさしく、我々ライターのために、2500年前に書かれた言葉のように思えてなりません。 つまり、取材とは取材対象を知り尽くすことから、始めなければならない行為であり、このプロセス抜きには、成功は覚束きません。 かつて、あの司馬遼太郎氏が『街道をゆく』という雑誌の企画で、日本国内のみならず、歴史ある世界の名所を求めて、紀行文