第86回 こんなに素敵なアジア人もいます フランクフルト市内のある駅で、電車の扉が開いて、 一歩その人が足を踏み入れたその瞬間、 「わぁ、この人は凄い!」と 誰もが文句無しに、心の中で思わず唸ったのです。 その車両に乗り合わせていた20人ほどの乗客全員、 女性はもちろん、男性も、 その老若、その国籍にも関わらず、 手元の書類や雑誌から目を上げて誰もが 一瞬、彼を見つめたのですから。 その人は、まだ30歳前後のアジア人の男性でした。 スターのような派手さは全く無かったのです。 むしろ実にアジア人らしい、ごく実直そうな顔に短髪。 そして、普通の人では、なかなか着こなせないであろう 白い麻の上下に、ブルーのシャツを合わせて こざっぱりとまとめていました。 しかも、この方が皆の視線を強烈に引くのは、 その服装のせいではなかったのです。 彼自身から輝くように溢れ出る若さと 素直に伝わる年齢以上の品格