以前、三業地だった町は独特の匂いがある。都内でいえば神楽坂や大塚、大森海岸、根岸などがそうで、今でこそ長屋の二階から三味線の音色が聞こえてくるなどは滅多にないが、ちょっとした小料理屋や洋食屋に旨い店が多い。 荒木町も同じで、今でも流しのギター弾きがいるし、路地を入ったところにある何気ない店にふらっと入って大正解だったことがしばしばある。以前はフジテレビや文化放送が近くにあって深夜まで飲み歩く業界人を多く見かけたが、両社とも移転し、一時期はかなりさびれていた。 が、ここ数年、有望な若手の開業が相次ぎ、荒木町はまた活況を取り戻してきた。「宮わき」「うえ村」「うぶか」「鮨てる」「木挽町 大野」といった店だ。こう記すと日本料理店が多いことに気付くが、そこがまた元三業地らしくていい。 町が活況を取り戻すと昼も活気が出てくるから、ランチの美味しい店が多くなる。 車力門通りにある「とんかつ鈴新」は、創業