EU離脱キャンペーンが勝利したことの背景には、ファラージに加えて前ロンドン市長ボリス・ジョンソンという主流派の政治家が加わることで離脱派の言論にお墨付きを与えた効果と、キャンペーンでの論点を左のほうに広げていった効果が大きい。そうした中で、EU残留派は一体どういう状況にあったのだろうか。 コックス議員の死 EUへの残留か離脱を問う国民投票があと一週間に迫った日に、ヨークシャーの労働党議員、ジョー・コックスが殺害された。 コックスは、人種の多様性をまっすぐ肯定的にとらえ連帯を説き、最近ではシリア難民の援助にまさに駆け回って尽力していた議員であった。そんな議員が自身の選挙区で殺されてしまったのである。 ちなみに近世の英国史でこれまでに殺された議員は3人だけであり全てアイルランド関係である。そんな国で第4の犠牲者がEU離脱をめぐり投票運動が加熱するさなかに起きたことには、社会的意味も歴史的意味も