障害の領域で「本人による選択」という言葉がよく聞かれるようになった。この分野で「選択」をコミュニケーションの問題として話題にする時、2つのポイントがある。その第一は、「選択」という反応自体は非常に単純な行為を、ことば同様のコミュニケーションの手段にしてみようというものである。そして第二には、障害を持つ個人の「自己決定」の表明として、つまりコミュニケーションの目的(内容)としての「選択」を重視しようというものである。「選択」を、このように手段としても目的としても重視することは、ノーマライゼーション時代の障害を持つ個人に対するリハビリテーションに不可欠な要素だと考えられる。以下では、「選択」の背景理論から具体的な技術に至るまでの問題を概観し、さらに自己決定としての「選択」に基づく新しい発達観の可能性にまで言及する。 1.コミュニケーションとは能力としてのコミュニケーション 障害を持った個人を対