青木義治「環境の幻覚及び妄想に及ぼす影響」(1)-(3) 『医療』vol.5, no.1: 1951, 5-8; vol.5, no.5: 1951, 266-269; vol.5, no.8: 1951, 410-415. 国府台病院の「精神科医長」であった青木義治による論文。幻覚と妄想が、環境や社会的条件によってどのように影響されるのかを研究するという枠組みで、戦争時に分裂病となった患者を、大戦開始1年間と、終戦前1年間の二つのグループにわけて、それぞれにおいてどのような妄想や幻覚があったかということを比較する研究である。幻覚・幻聴の内容が、戦争中・戦争末期・終戦とともに鋭く変化し、戦争中は軍規への違反が主に問題であったが、敗戦記には敗戦状況を判然と示すもの、戦後は敗戦事実に直面した苦悩のもの、戦犯、軍の混乱を示すものになった。 一番面白いのは、幻覚や幻聴の内容を整理した部分である。幻
先日アップした記事、「アメリカの母体死亡率はなぜ発展途上国より高いのか」について、もとのエコノミストの記事の誤訳に基づいているという指摘を受けました。直接私の目につく形で指摘してくださったのは、ツイッター上の くまさん@bibliobibi でした。お礼申し上げます。他にも気がついた方が多くいらっしゃったと思います。 間違いを端的に言いますと、グラフ上のdeveloped countries を developing countries と勘違いして、あとはずるずるとその間違いを引きずりながら全体にどんどんおかしなトーンになっていくというものでした。みっともない間違いです。お詫び申し上げると同時に、猛省いたします。以下に、とりいそぎ手直しした記事を残しておきます。 エコノミストの記事より。アメリカの母体死亡率maternal mortalityが、過去25年間にわたって上昇しているという異
Eghigian, G. (2015). "A Drifting Concept for an Unruly Menace: A History of Psychopathy in Germany." Isis 106(2): 283-309. 今年度は感染症の歴史の本を読んで講義ノートを作ったり、あるいは医学史の他の領域の本や論文を読んだりする機会が多かったが、久しぶりに専門の領域である精神医療の歴史の文献を読むことができるモードに入った。楽しく心躍らせながら読んだ論文が素晴らしかった。 「精神病質」という診断カテゴリーは、曖昧なものとして精神科医たちが警戒しているものである。精神科医が権限を拡張するために作り上げた概念であるとか、性犯罪をおかしたものに厳しい対応をするための道具であるといった議論がされてきた。日本では1960年代から70年代に、これが精神疾患として実在するのか、それとも
飛行機の映画で『アナと雪の女王』を観た。ディスニーのアニメらしい良い映画で普通に楽しんだ。原作はアンデルセンの『雪の女王』で、そこからかなりの改変があるが、雪の女王をどう描くかという違いが特に面白く、また重要である。アンデルセンの作品では、冷たい心を持った雪の女王がいて、彼女が厳しい冬を起こして、本当は優しい男の子を捕まえて心を凍らせて冷たい心の持ち主にしてしまう。一方『アナと雪の女王』では、二人姉妹のお姫様のうちのお姉さんのエルサが、彼女に特有の能力として触れるものをすべて凍らせる能力を持っていたが、そのような反社会的な能力が自分にあることを周囲の人はもちろん家族に対しても隠し、人目を避けてお城に閉じこもって生活してきた。しかし、そのような特有の魔力を持っていることが戴冠式の日に明らかになり、人々は彼女を恐れ忌避するようになり、彼女は一人で北の山に向かう。この逃避は、差別する人々から逃げ
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く