午前8時半過ぎ、心療科病棟の子どもたちは、隣接する特別支援学校に向かう。1人の女の子が「手つないじゃおう」と付き添いの看護師の手を取ると、別の子も「私も」とじゃれついた。 小学校高学年の女の子Dさんは、ちらりとその様子を見ながらも、輪に加わらない。ランドセルを小さく揺らしながら、表情を変えずに歩いていった。 Dさんは、父親からたたく蹴るの暴力を受けていた。父が出張などで不在がちになると、今度は彼女がきょうだいを殴ったり、母親に暴言を吐いたりするようになった。 虐待を受けた子は、同じことを再現する傾向がある。医師の川村昌代さん(41)は「怖い存在がいなくなり、ホッとしたんでしょう。暴力を振るった父親と同じように、自分の思い通りにいかない時に暴力で解決しようとしてしまう」と話す。 さらに、虐待通告を受けた後の診察で、Dさんは自閉症スペクトラム障害だと分かった。他人の感情を読み取るのが苦手で、親