戦後日本で最も経済破綻(はたん)が近かった日をあげるなら、ちょうど20年前の1997年11月26日である。多くの銀行で深刻な取りつけ騒ぎが起き、金融恐慌寸前となった。報じられなかった事実もふくめ、当事者たちの記憶をたどって改めて歴史に刻みたい。これからの私たちのために。 あの日の記憶をたどると東京・日本橋にある日本銀行記者クラブの小窓から見えた曇天がよみがえる。 97年11月26日、全国の約20銀行の本店や支店に預金者が殺到した。これだけ広域に取りつけが起きた例は、終戦直後の混乱期を除けば戦後初めてだろう。 午前10時ごろ全国各地の記者から取りつけが起きているとの電話が相次いだ。私は急ぎ東京駅近くの安田信託銀行(現みずほ信託銀行)本店ビルに走った。入り口に客の姿はなくホッとしたのを覚えている。 だが扉を開けて、血の気が引いた。ふだんは客もまばらなロビーが、まるで満員の通勤電車内のように客で