殺害されたノーバヤ・ガゼータ紙の記者、アンナ・ポリトコフスカヤの墓に置かれた遺影=モスクワ(撮影・伊藤智昭、共同) 2014年5月、親ロシア派が実効支配したウクライナ東部2州で「国家としての自立」を問う住民投票が強行されたときだった。ロシア紙ノーバヤ・ガゼータ(新しい新聞)の記者パーベル・カヌイギンはドイツ紙の記者とドネツク州アルチョモフスクのピザ屋にいた。突然、男4人組が同じテーブルに座り、カヌイギンの書いた記事について問い詰めた。 「投票所には年寄りしかいなかっただと?どういう意味だ」 4人組に車に押し込まれて親ロ派の拠点に連行された。パソコンにウクライナの首都キエフで撮ったデモ隊の写真が残っていたことから「スパイ」とののしられた。殴られて歯が欠け、結婚指輪と現金を奪われた。 ▽犠牲者6人 解放後、カヌイギンは拘束の一部始終を記事にして対抗した。その後もウクライナ取材を続け、15年にド