「戦後教育学」の捉え返しは、昨今の日本の教育アカデミズムで一つの潮流をなしている感があるが、教育社会学界では、広田照幸が『思想』2007年第3号(岩波書店)の「思想の言葉」に寄せた「教育学の混迷」が一つのスタンダードな認識となってしまい(かつて自分が書いた小文にも、そのまま借りた部分がある)、ごく一部の例外を除いて、それ以上の議論の深まりをみせていない。 また、昨今の教育政治をめぐる認識としても、同じく広田照幸が『格差・秩序不安と教育』(世織書房、2009年、ただし初出はさらに前)で提示した「三極モデル」――旧来保守・新自由主義・社民リベラル――がしばしば参照されるが、そのことによって、これまたそれ以上の議論の深まりはみられない。 そうすると、「戦後」についても「現在」についても、日本の教育政治をめぐる認識の初期値を与えているのは広田だということになるわけだが、それは彼が何か「政治」に関し