[読書] 上野千鶴子編『脱アイデンティティ』 (勁草書房、05年12月) (挿絵は、アンティゴネ。オイコス[=かまど、家庭]の掟=肉親の愛情と、ポリスの掟との相克は、彼女を「二つの私」に引き裂き、破滅させた。ヘーゲルやラカンのアンティゴネ論を批判して、ジュディス・バトラーは「近親愛の可能性」を指摘したが、死角を突いて鋭い。) 「自我」とは一枚板の「本質」や「実体」ではなく、「複数の私」を内部に含む多元的なものであり、「一貫性を欠いたまま[多元的自我を]横断して暮らすことは、もはや病理ではなく、ポストモダン的な個人の通常のありかたである」(p35)というのが、本書の根本テーゼ。上野論文についてはアマゾンのレヴューに書いたので、ここでは残りの論文の幾つかをノート。 (1) 第3章、三浦展論文。『下流社会』の著者だが、80年代からパルコでマーケティングや広報を担当し、消費者の「欲望」を分析する
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