■罪悪感と喜びの複雑な捻れ 怠け者とは何もしない人ではない。自分の好きなことは喜んでする。著者の息子が朝から晩までカウチ(寝いす)で寝ころんでいたのも、けっして怠けていたわけではない。したいことを、していただけだ。 しかし、その行為は「資本主義の精神」の象徴であるベンジャミン・フランクリンが唱えた「時は金なり」の働く倫理に反していた。だから著者も最初は息子に怒りを覚えたはずだ。これに対し「怠惰の唱道者」サミュエル・ジョンソンは、「すべての人間は、怠け者だ」と言って、働かない倫理を支持した。 著者によればこの相反する倫理は対立せずに「複雑に捻(ねじ)れた認識」として共存している。実際、「自分が怠けているとき」は罪悪感と同時に喜びを覚える一方で、「他人が怠けているとき」には、嫉妬(しっと)とともに「怒りの感情が引き起こされる」からだ。つまり人間は働き者と怠け者に分類されるのではなく、両方の要素