24歳で早世した明治の作家、樋口一葉の代表作「たけくらべ」の自筆原稿がオークションに出品される。百二十余年前のものとは思えない鮮やかさで、近代文学の黎明(れいめい)期を飾った作品の魅力を伝えている。 冒頭、美しい題字が目を引く。<廻(まわ)れば大門の見返り柳いと長けれど>との書き出しもはっきりと読み取れる。書き込まれたルビの赤字が白地の原稿用紙にはえている。 亡くなった1896年に書き上げたもの。没後は長く所在不明で、「戦争で焼けた」との見方もあった。だが1957年、東京・浅草の松屋百貨店で開かれた毎日新聞社主催の「一葉展」が契機となり、美術商が所有していることが分かって世に出た。