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ブックマーク / honz.jp (65)

  • 『森瑤子の帽子』「女であること」と向き合い続けた作家の生涯 - HONZ

    確かあれは夏木マリさんの舞台を番組スタッフと観に行った帰り道だった。 「カッコいい女の人、というと誰を思い浮かべます?」 若いスタッフに訊かれた。たぶん彼女は夏木さんのパフォーマンスに圧倒されていたのだろう。質問のかたちをとってはいるけれど、言外に「夏木さんほどカッコいい女性はいないですよね」というニュアンスが込められていた。 もちろん夏木マリは文句なしにカッコいい。でもその時ぼくはあえて別の人物の名前をあげた。すると後輩からは「え?誰ですかその人」という反応が返ってきた。若い彼女が知らないのは無理もない。その人がこの世を去ってもう四半世紀が経つのだから。その人の名は「森瑤子」。1978年に作家デビューすると瞬く間に人気作家への階段を駆け上がり、1993年に胃癌のため52歳で亡くなった。彼女はバブルに沸く80年代を全力で駆け抜けた作家だった。 『森瑤子の帽子』は、時代のアイコンだった作家の

    『森瑤子の帽子』「女であること」と向き合い続けた作家の生涯 - HONZ
  • 2018年 今年の一冊 - HONZ

    HONZメンバーが選ぶ、今年最高の一冊。ようやく出揃いました! いや厳密に言うと、まだ出揃っておりません。まず最初に、少しだけ業務連絡をさせてください。 「成毛代表、原稿お待ちしております。何とか年内のうちに、よろしくお願いします!」 さて、世間では「平成最後」のキーワードが飛び交っておりますが、こちらのラインナップは、「平成最後」とは無関係なものばかり。そう我々は、平成最後だからといってを読むワケではないですし、元号が変わったからといってを読むワケでもない。ただ面白ければ、それでいいんです。 そんな珠玉のラインナップを、今回は原稿が届いた順にご紹介いたします。締切より前の日に届いた人たち、締切日当日に駆け込みで送ってきた人たち、そして締切を過ぎた後に送ってきた人たち。まぁ色んなタイプの人がいてホント面白いです。編集長冥利に尽きます。 それでは、どうぞ! 堀内 勉 今年最も「反響の大き

    2018年 今年の一冊 - HONZ
    tacticslife
    tacticslife 2018/12/31
    女性陣が提出したのがほとんど締め切り後なのは、どういうことなのだろう?/そして成毛さんは未だ出してないのかw
  • 『ホンダジェット 開発リーダーが語る30年の全軌跡 』 - HONZ

    「ホンダジェット」は、バイクや自動車のメーカーとして有名なあのホンダが、初めて市場に送り出した飛行機である。斬新なデザイン、美しい仕上げと塗装、ライバル機の群を抜く性能。デビュー初日にいきなり100機以上売れ、「航空界のノーベル賞」ともいうべき権威ある設計賞を総なめにした。一言でいえば、誰もが認める傑作機だ。 その「ホンダジェット」についての格的なノンフィクションである書の著者、前間孝則氏は私が航空機関係の記事やを書くようになるきっかけを作って頂いた方であり、まさに物書きとしての誕生の瞬間から御指導いただいている大先輩である。加えて、飛行機好きを自認する私にとって、ホンダジェットはぜひなにか書いてみたい題材でもあった。だが、文庫化のための解説の原稿依頼を勇んで引き受けてはみたものの、いざ読み返してみるとそう易々とはいかない。 何しろ書は、単なる航空機の開発史や技術論という枠組みを超

    『ホンダジェット 開発リーダーが語る30年の全軌跡 』 - HONZ
  • 『ヒットの設計図 ポケモンGOからトランプ現象まで』ヒットの原動力はあなたの中にある - HONZ

    ポップとキャッチーはまったく別の感覚だと思う 中田ヤスタカはそう言った。Perfume やきゃりーぱみゅぱみゅをブレイクさせ、日を代表する ヒットメーカーとして脚光を浴びる彼が、2013年、自身のユニットCAPSULE のアルバムリリースに際してウェブサイト「ナタリー」でのインタビューに応えて語った言葉だ。 二つの言葉は混同されることが多い。特に音楽の分野においてはマニアックでないタイプの曲調、売れ線の楽曲に「ポップでキャッチー」という形容がなされることが少なくない。 しかし、彼が言う「ポップ」と「キャッチー」は、根的に異なる。 ポップかどうかは結果論である。それを決めるのはあくまで音楽それ自体の外側にある状況だ。たとえまったく同じ曲でも、それがラジオやテレビやインターネットを通じて広がり、それを聴いて口ずさむ人が多ければその音楽はポピュラー(=ポップ)になり、そうでなければポップでは

    『ヒットの設計図 ポケモンGOからトランプ現象まで』ヒットの原動力はあなたの中にある - HONZ
  • 『子育ての大誤解 重要なのは親じゃない 』「言ってはいけない」真実が示す、親と子の幸福なあり方 - HONZ

    『子育ての大誤解 重要なのは親じゃない 』「言ってはいけない」真実が示す、親と子の幸福なあり方文庫解説 by 橘 玲 『子育ての大誤解』は掛け値なしに、これまででわたしがもっとも大きな影響を受けたのひとつだ。なぜなら長年の疑問を、快刀乱麻を断つように解き明かしてくれたのだから。 いまでいう「デキ婚」で24歳のときに長男が生まれたのだが、その子が中学に入るくらいからずっと不思議に思っていたことがあった。親のいうことをきかないのだ、ぜんぜん。13、4歳のガキと30代後半の大人では、経験も知識の量も圧倒的にちがう。どちらが正しいかは一目瞭然なのに、それを理解できないなんてバカなんじゃないのか、と思った。 しかしよく考えてみると、自分も親のいうことをまったくきかなかった。だとすればこれは因果応報なのだとあきらめたのだが、それでも謎

    『子育ての大誤解 重要なのは親じゃない 』「言ってはいけない」真実が示す、親と子の幸福なあり方 - HONZ
  • 『石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの』良き敗者の魂 - HONZ

    「二課の花はサンズイ」と言われる。警視庁捜査二課は、汚職や詐欺、横領、背任、選挙違反などを摘発する部署だ。「サンズイ」は汚職の「汚」のサンズイに由来する隠語で、ゴンベン(詐欺)やギョウヨコ(業務上横領)などに比べ事件の格が一段上とされる。二課の刑事にとって、汚職事件の摘発は、命がけで成し遂げたい悲願である。 『石つぶて 警視庁二課刑事の残したもの』は、警視庁創設以来初めてといっていい巨大な事件に立ち向かった刑事たちの活躍を描くノンフィクション。「石つぶて」とは、小さな石ころを意味し、転じて価値のないもののたとえにも使われるが、書に登場する無名の刑事たちの奮闘ぶりは、眩い輝きを放って読者の心に強い印象を残す。 警視庁創設以来、二課が手がけた事件の中で、もっとも複雑かつ巨大な事件。それは外務省内閣官房報償費流用事件、いわゆる「機密費」流用事件だ。 発端はささやかな内部告発だった。外務省に出入

    『石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの』良き敗者の魂 - HONZ
  • 『世界一訪れたい日本のつくりかた』観光の基本は「楽しい」にあるべき - HONZ

    去る6月19日、東京大学の伊藤国際学術研究センターで行われた、東京大学政策ビジョン研究センター主催の『文化を基軸とした融合型新産業創出研究ユニット キックオフシンポジウム「日文化政策の新たな姿を探る」』に参加して来た。 その基調講演がデービッド・アトキンソン氏で、日の観光政策についての中身がある非常に良い講演だった。アトキンソン氏のポイントは幾つかあったが、一番印象に残ったのが、「日の外国人に対するunwelcomingな姿勢を変えなければならない。ただ単に文化財を囲い込んでいるだけでは、文化財を管理しているつもりで実は破壊している。観光の基は『楽しい』にあるべきで、もっと積極的に文化財を観光資源として活用すべきだ」という点である。 要は、文化財を後生大事に抱え込んで大事にしている姿勢こそが、文化財を人々から遠ざけ、資金不足から修復もままならない状況に陥れ、それが文化財を破壊する

    『世界一訪れたい日本のつくりかた』観光の基本は「楽しい」にあるべき - HONZ
  • 『ブスの本懐』盛り込みすぎて、何のことだか分からなくしてしまえ! - HONZ

    美人について書かれた書物は、数多く存在する。一方ブスに焦点を当てたは、実に少ない。皆が触れてはいけないと思っているからだ。ブスーーそれは響きだけで人を殺すパワーをもった言葉。人道的な理由から、禁止令が出されてもおかしくないほどだ。 私もタイトルを見たとき、強く惹きつけられるのと同時に、目を背けたくなるような感情に襲われた。レジへ持っていくまでに要したのは、実に1ヶ月の期間と4度の挑戦。 ブスが『ブスの懐』を買う、これ以上の屈辱があるだろうか。しかし書を読み始めてみたら、そんな瑣末なことで悩んでいた自分が馬鹿らしくなった。 書は、日頃タブー視されがちな「ブス」という言葉を、これでもかというほど盛り込んでいる。ブスという言葉を避けるのではなく必要以上に用いることによって、最終的にブスとは何なのかを分からなくしてしまおうというのが、著者の狙いなのだ。いまだかつて、こんな画期的な解決策があ

    『ブスの本懐』盛り込みすぎて、何のことだか分からなくしてしまえ! - HONZ
    tacticslife
    tacticslife 2017/02/04
    「心臓が止まっている以外、元気」ワロタwwそれ死んでるからww/執筆した篠原さん、髪型とメイク変えたら、普通に可愛いと思うが。
  • 20代の自分に読ませたい 『コンプリメントで不登校は治り、子育ての悩みは解決する』 - HONZ

    昔から、休み明けは学校に行きたくないもの、と相場は決まっていた。大人だって、きっと大して変わらないだろう。読みさしのがあれば最後まで読みたいし、クライマックスのゲームはさっさとクリアしてしまいたいものだ。でも「不登校」ときくと、途端にドキドキしてしまう。それが、悪いことだと教えこまされてきたからだ。 ここ数年、不登校は増加傾向にあると報道されている。議論百出だが、解決策はなかなか見つからない。先日もフリースクールを義務教育として認めようという議論がなされたが、法制度の変更には至らなかった。一方で、書の主張は力強い。「親の力で子どもの心に自信の水を満たせば、不登校は治る」と断言しているのである。 しかも、その主張は実証研究に基づいている。教育現場で読まれる雑誌『教育技術』の編集長の薦めでまとめられたというから、その信頼性は高い。前著『不登校は99%解決する』の読者レビューは300件以上あ

    20代の自分に読ませたい 『コンプリメントで不登校は治り、子育ての悩みは解決する』 - HONZ
  • 慟哭のノンフィクション 『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』 - HONZ

    大崎善生は大好きな作家の一人である。もちろん最初の一冊はあの『聖の青春』で、いきなりファンになってしまった。以後、著作のほとんどを読んでいる。どのも面白いのだが、なかでも、稀代のSM作家・団鬼六を描いた『赦す人』などは、誰にでも勧めたくなる出色のノンフィクションだ。 いちばん好きな作品は、短編集に収められた『優しい子よ』である。重い病に冒された子どもとの交流に題材をとった私小説は、大崎の作品に限らず、これまでに読んだの中で最高に泣けたである。いや、である、ではなくて、今や過去形だ。『いつかの夏』がいちばん泣けたの座を奪ったのである。何度も何度も嗚咽をこらえられないほど泣いたのは、このが初めてだ。 2007年におきた『名古屋闇サイト殺人事件』は、ネットで知り合った見知らぬ同士がおこした事件であったこと、まったく面識のない罪なき女性が帰宅途中で犠牲者になったこと、そして、その殺人方法

    慟哭のノンフィクション 『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』 - HONZ
  • 『進化の教科書 第1巻 進化の歴史』 進化入門の決定版 - HONZ

    ハーバード大学やプリンストン大学をはじめ、全米200以上の大学で採用さている教科書『Evolution: Making Sense of Life』の邦訳3分冊の第1巻である。「教科書」といっても、書は議論の余地のない事実が淡々と積み上げられた退屈なものではない。原著者は『ウイルス・プラネット』等で知られる大人気サイエンスライターのカール・ジンマーと『動物たちの武器』のモンタナ大学教授ダグラス・J・エムレンであることからも分かるように、科学読み物としての楽しさを保ちながら、確かな知識を与えてくれる内容となっているのだ。またAmazon.comでは『Evolution』の価格は12,000円以上と高価だが、この第1巻はフルカラーの図を多く含みながら、1,680円(税別)だというのだから買うしかない。さらに、邦訳者の1人には、『化石の生物学者』の著者であり『ネアンデルタール人は私たちと交配し

    『進化の教科書 第1巻 進化の歴史』 進化入門の決定版 - HONZ
  • 『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』は、ここまでの作家人生の、一つのピリオドとなる作品になりました。 - HONZ

    『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』は、2007年に起きた凄惨な強盗殺人事件を、被害者の磯谷利恵さんの人生を軸にたどったノンフィクションだ。すでにHONZでもレビューが掲載され、大きな話題を呼んでいる。これまで4作の作品を書いてきた大崎善生さんは、5作目の題材に選んだ作を「作家人生のピリオド」とまでいう。その言葉の裏側には、どのような思いがあったのか?(HONZ編集部) ――『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』は、2007年に起きた凄惨な強盗殺人事件を、被害者の磯谷利恵さんの人生を軸にたどるノンフィクションです。この事件を題材にしようと思われたきっかけはなんだったのでしょうか。 大崎 この事件は、私の息子が2歳のときに起こったんです。その当時、私はいつも午前中、子どもをあやしながらワイドショーを見るような生活をしていたんですよね。この事件は闇サイトで集まった無関係の男たちが起こしたも

    『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』は、ここまでの作家人生の、一つのピリオドとなる作品になりました。 - HONZ
  • 『会議でスマートに見せる100の方法』働く時間があったら昼寝しろ! - HONZ

    会議でスマートに見えること。それが私の一番の望みだが、だれだってそうだろう。とはいっても、会議中は眠くなったり、次の休暇やランチのことで頭がいっぱいになったりしてスマートに見せるのが難しくなるときもある。そんなときこそ裏ワザの出番だ。このでは、頼りになる 100の裏ワザを紹介しよう。 先人は「やみくもに働くのではなく、スマートに働け」とよくいうが、私のモットーは「働く時間があったら昼寝しろ」だ。こので紹介するワザを学び、身につけ、実行すれば、あなたはいつのまにか企業のトッププレイヤーへと駆け上がっているだろう。たとえ企業のトッププレイヤーがどんなものか分かっていなくても。 その前にあなたにちょっと質問がある。 あなたは会議にしょっちゅう出ている? あなたはキャリアを向上させたいと思っている? あなたはこんなあたりまえの質問

    『会議でスマートに見せる100の方法』働く時間があったら昼寝しろ! - HONZ
  • 『バブル 日本迷走の原点』バブルを知らない我らが世代に送る 客員レビューby 岩瀬 大輔- HONZ

    「岩瀬君のようにバブルを知らない世代に読んで欲しいを書いている」 バブル時代に日経証券部のキャップとして大活躍したジャーナリスト、永野健二氏からそのように言われていたが、ようやく上梓された。 あの時代をMOF担として渦中で過ごし、最近では読売新聞の書評委員として筆をふるう当社の出口会長をして、「あのバブルの時代は何だったのか、誰かにきちんと総括してほしいとずっと渇望していた。やっと読み応えのある1冊に出会った気がする。」と言わしめた一冊である。 私なりに書の内容を整理すると、次の通りである。 1973年の変動相場制への移行とオイルショックを受けて、80年代には世界的な金融の自由化が進み、膨大な量のマネーが世界中を動き回るようになる。日米独の当局は米国の不況脱出を後押しするドル安為替介入・金利引き下げなど協調的なマクロ経済政策を実施するが、国内で求められる経済政策とは必ずしも整合性が取

    『バブル 日本迷走の原点』バブルを知らない我らが世代に送る 客員レビューby 岩瀬 大輔- HONZ
  • 『バブル 日本迷走の原点』邪悪なる善は甘い蜜に潜む - HONZ

    伏魔之殿 遇洪而開 書は「始動」「膨張」「狂乱」「精算」の4章、全21節で構成された好漢譚として楽しむことができる今年一番のおすすめだ。各節ごとにそれぞれ10人ほどの好漢たちが登場し、各々の役割を演じては舞台を去ってゆく。その好漢たちとは時の首相であり、日銀総裁であり、証券会社の経営者であり、銀行の頭取たちだ。もちろんバブル紳士も高級官僚も登場する。 広辞苑によれば、好漢とは「好ましい男」。けっして「正義の男」でも「立派な男」でもない。男として魅力的ではあるが、どこか危ういところを持っている人物たちだ。著者は同時代の取材対象になった好漢たちと密に接しながらも、その妖しい魅力に惑わされることなく、現代政治経済史の証言者に徹したジャーナリストだ。しかし、その彼もまた好漢なのである。 その証左は書冒頭の一文だ。 「バブルとは、グローバル化による世界システムの一体化のうねりに対して、それぞれ

    『バブル 日本迷走の原点』邪悪なる善は甘い蜜に潜む - HONZ
  • あなたの「ふつう」をあつらえる 『未来食堂ができるまで』 - HONZ

    この夏に軽井沢で長野県産ワインをプロモーションするためのレストランをオープンしたのだが、当初の予想通りと言うか、とにかく全く儲からない。クラウドファンディングで沢山の方々から開業資金のご支援を頂いて、それが大きな助けになっているのだが、それでも内装・設備など開業コストの負担が重過ぎて、とても投下資金が回収できる感じはない。 レストラン経営が儲からないとは聞いていたものの、売上、原価、人件費、家賃、減価償却費くらいしか項目がない単純なビジネスモデルなのに、黒字にするのが驚くほど難しいことを改めて思い知らされた。 そんな時に、この『未来堂ができるまで』に関するダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー編集部による書評『未来堂は、経営の未来となるか』 を読んで俄然興味が湧き、その日の内に神保町の日教育会館の地下にある未来堂まで行ってランチを頂いてきた。 いきなり書の著者である小林せか

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  • 『住友銀行秘史』戦後最大の経済事件、イトマン事件を告発したのは私です - HONZ

    書『住友銀行秘史』は、日における「戦後最大の経済事件」と言われたイトマン事件を、銀行側からの証言で綴った貴重な資料である。当時、自分は住友銀行東京店の隣に位置する銀行で残業しながらヒーヒー言っていたが、まさか隣でこんな壮絶な出来事が繰り広げられていたとは…。自分はつくづく子供だったと思う。 バブルを経験していない若い人には理解できないかも知れないが、1997-98年の大蔵接待汚職事件を契機に大蔵省から金融庁と証券取引等監視委員会が分離独立するまでは、銀行というのはかなり恣意的な(ずさんな?)融資を行なっていたのである。 そして、新しい資市場や金融規制の流れを理解しないで、いまだに旧態依然とした経営を行なっている古い体質の大企業が不正経理問題などで次々と馬脚を現しているのは、必然の流れと言えるだろう。もはや「時代は変わった」のである。 1990年前後に起きたイトマン事件を覚えているの

    『住友銀行秘史』戦後最大の経済事件、イトマン事件を告発したのは私です - HONZ
  • 『プライベートバンカー カネ守りと新富裕層』これは格差拡大が生み出す、人類社会の未来の姿なのか? - HONZ

    とてもおかしな連想かも知れないが、書を読んで映画「ロード・オブ・ザ・リング」を思い出した。実際に見た方も多いと思うが、この映画は闇の冥王サウロンが自らの残忍さ、邪悪さ、そして生きるもの全てを支配したいという欲望を注ぎ込んだ、世界を滅ぼす魔力を秘めたひとつの指輪を巡る壮大なドラマである。 邪悪なものだと知りながらも、一度サウロンの指輪を手にすると、その怪しげな魅力に取り憑かれ、迷宮の闇に転落してしまう。それは、書に登場する、数十億円というおカネを守るために日を捨ててシンガポールへ逃れ、人生そのものを見失ってしまった一部の富裕層の姿とオーバーラップする。 今や大前研一の指摘する、主権国を離れた「ホームレスマネー」は世界全体のGDP(約7千兆円)に匹敵する規模にまで膨れ上がり、また『21世紀の資』のトマ・ピケティが指摘するように、世界全体の純資産の1割弱(数十兆円)がタックスヘイブン(租

    『プライベートバンカー カネ守りと新富裕層』これは格差拡大が生み出す、人類社会の未来の姿なのか? - HONZ
  • 『〆切本』あの大作家は書かないのか、書けないのか - HONZ

    この原稿は来は2016年8月30日の午前7時までに公開しなければならなかったのだが、現在、9月1日の午前9時をまわろうとしている。このまま沈黙を守るわけにもいかず、無理矢理書き出したのだが、原稿用紙5枚程度の分量に過ぎなくても、すんなり書き終える自信がない。いや、延べ90人の作家の〆切に関する文章を集めた書を読むと、そんなにすらすらと書いたらいけない気すらしてくる。 〆切は確かに守らなければならないのかもしれない。大学人だった森博嗣は〆切にルーズな出版業界を「かなりの非常識」と指摘する。吉村昭のように「締め切り日前に必ず書き上げ、編集者に渡すのを常にしている」のは例外なのだろう。〆切があることで人間は頑張れると聞くが、〆切があっても頑張れない人間もいるのである。 「内向の世代」の代表的な作家の後藤明生は文学賞のパーティーに行く途中の電車ですでに2日延ばしてもらった〆切りがもう1日延びな

    『〆切本』あの大作家は書かないのか、書けないのか - HONZ
  • 『タングステンおじさん』化学にのめり込んだ、少年時代のオリバー・サックス - HONZ

    稀代の書き手であったオリバー・サックスが亡くなって1年(8月30日が命日)。『タングステンおじさん』は、2001年に単行として刊行され、このたび文庫化された作品ですが、私は単行を読んでいなかったので、この文庫版を手に取りました。だって、なんて魅力的なタイトルなのでしょう!(うかつにも読んでなかったわたし…) すこし回想めきますが、私がオリバー・サックスという名前を意識するようになったのは、今から22年前、The New Yorkerに、An Anthropologist on Mars (火星の人類学者)という記事が掲載されたときのことでした。自閉症の動物学者テンプル・グランディンに取材したこの作品を引き込まれるように読んだ私は、これはすごい書き手だ! と思い、それ以来、サックスの記事が載るのを楽しみにするようになりました。 実はこの「火星の人類学者」は、のちに映画化される『レナードの

    『タングステンおじさん』化学にのめり込んだ、少年時代のオリバー・サックス - HONZ