遠地に派遣される。難読だからだ! 朝、自宅でくじを引き「男衾」という場所に向かうことになった。 「男 袋 難読」と検索したら「おぶすま」と読むことが分かった。埼玉の北部。池袋から東武東上線に乗って1時間半ほどで行ける。 新鮮な感情を取っておくために、敢えて男衾についてはそれ以上調べないことにしていた。調べないことにしていたが、これがすごく不安である。ただ当てもなく歩くだけになったらどうしようと思う。 そもそも難読というだけで取材先に決まったらしい。唐突に遠地に派遣される。なぜなら難読だから、という理屈である。「なぜだ」と素直に思う。いや、この不安な気持ちが、男衾に着いてから気持ちを盛り上げるためのスパイスになるんだろう。そう願うしかない。 しかし平易に読めない場所に行くというのは思いのほか不安なことだった。外国を旅行する気持ちに近い。 そんなことを考える間、窓からの景色がビル街から住宅地に