<この国はどこへ行こうとしているのか> ◇「閉じる」こと考えよう--玄侑宗久さん(55) 墨色の被布--作家の玄侑宗久さんは、福島県三春町にある福聚寺(ふくじゅうじ)の住職でもある。寺は福島第1原発から西へわずか45キロ。震災直後の2カ月で、玄侑さんの寺の檀家(だんか)だけでも5人が自殺した。 「福島県民の間で、いくつもの心の分裂が深刻化している」と言う。放射能から逃れるため福島から出る、出ない。残ったとしても地元の米や野菜を食べる、食べない。子どもに食べさせる、食べさせない。それらはまるで「踏み絵」のような苦痛を伴う。 「放射能の問題は、結局精神的な問題になってしまっています。年間100ミリシーベルト以下の低線量被ばくについては健康被害を示す明確なデータがない。現代人は分からないことに向き合うのが苦手ですからどちらかに分類したがり、その結果二つの極端な立場が生まれた。放射線は少なければ少