わたしは「やるな」と言われたことは激しくやりたくなってしまう性分で、例えば「そこの赤いボタンを押すと核弾頭が発射されて全世界に迷惑がかかるから、押しちゃいけないよ」などと言われようものならば、「へ〜え。どれだけ迷惑なのかなぁ」と躊躇なくポンと赤いボタンを押してしまうタイプなのであり、社会性とか、倫理とか、道徳とか、ええい鬱陶しい。要するにそういった、「人間として常識に沿って云々」という同調圧力とどう折り合いをつけるかで日々悩んでいる。「苦悩」と言い換えてもいい。だからフィクションの世界で暴力を求めようが殺人行為に歓喜の声を上げようが別に人の勝手じゃねえかと唾棄しつつ、ドス黒い気分の時にはドス黒そうな映画をチョイスし観ることにしている。 本作『マーターズ』は、そのドス黒さの解放の代置として150%機能する素晴らしいインモラルを全面に押し出した、後々カルト化する予感すらあるグラン・ギニョール