やられたらやりかえす、倍返しだ。 テレビドラマ『半沢直樹』の勢いが止まらない。大銀行の組織論理に対して、たじろぐことなくバンカーの矜持を貫き、理不尽な統制に立ち向かう半沢の姿勢が受けている。「基本は性善説。しかし、やられたら倍返し」が信条の半沢は、四面楚歌に追い込まれながらも、不正に関わった上層部、さらにごう慢な国税や金融庁との対立もいとわず、見事に非道に切り込み、自らの信念を貫いてゆく。 僕は創業して二十年あまりだが、資金繰りにあえいだ時期が長く、百人を超す銀行員と、それこそ半沢の父のごとく付き合ってきた。なので、銀行の特性は肌身に染みて理解しているつもりだ。銀行という組織では、社員一人ひとりが大金を扱うために、純然たる性悪説に基づく厳格なシステムが構築されている。不正や癒着を防止するための長期休暇や転勤に加え、内部検査も頻繁に行われ、そこでミスが発覚すると取り返しの付かない汚点となって