「リメーク・ドラマ」 今年8月、プロ野球の現場では、こんな言葉が囁かれていた。 11ゲーム差をつけて、首位を独走していた広島が、2位巨人に徐々に差を詰められていた。関係者やファンの脳裏をよぎったのは1996年、11.5ゲーム差をひっくり返されて優勝を逃した悲劇、いわゆる巨人にとっての「メークドラマ」だった。 当時と状況が酷似していることから、何度も、何度も、20年前のことが掘り起こされ、その再現という意味で、冒頭の言葉が生まれたのだ。 そんな中、こう断言する男に会った。 「大丈夫。今年はそんなことは起こりませんよ」 野村謙二郎だった。 広島25年ぶりの優勝の、種を蒔いた人・野村謙二郎。 '96年、3番遊撃手のチームリーダーとして、あの悲劇を経験したレジェンドだ。果たして、野村の言葉を聞いてから2週間後、カープはついに四半世紀ぶりの扉を自分たちの手で開けた。 今シーズンの圧倒的なリーグ制覇が