約110年ぶりの解体修理が進む奈良・薬師寺の国宝・東塔(とうとう、8世紀前半ごろ)で、建立当初の状態をとどめた極彩色の文様が見つかった。天井には浄土に咲くという空想上の花「宝相華(ほうそうげ)」が描かれていたが、格子に隠れた部分は空気に触れにくかったため、1300年を経ても鮮やかさを保っていたらしい。 奈良文化財研究所が30日に公表した紀要で報告した。2013年、高さ34メートルの三重塔の初層の天井の格子を外したところ、赤、青、緑色のグラデーションや黄、オレンジ、灰色が残っていた。蛍光X線や光学測定の結果、鉛系顔料や緑青、ベンガラのほか、昆虫の分泌物から採る有機染料の臙脂(えんじ)を使った可能性があるという。 調査した奈良教育大の大山明彦教授(絵画記録保存)は「青色や赤紫色がこれほど鮮やかに残っているのは画期的。奈良時代に有機染料が使われた例は正倉院宝物の工芸品や仏像などわずかにあるだけで