(南方新社・1980円) 自然の価値、守るということ 著者は元環境省自然環境局長。技官としての経歴をはじめ、国立公園や鹿児島県での勤務など現場の経験も長い。帯のキャッチコピーは「自然の“価値”とは何か」であり、いわば著者の畢生(ひっせい)の仕事のまとめがこの本になった。著者の基本的な立ち位置は、冒頭の「はじめに」に引用される「鹿児島環境学宣言」の全体に記されている。「環境問題は二一世紀最大の課題である。それは二重の意味をもっている。第一は外部にある環境の破壊であり、第二は私たちの内にあった自然に対する感性の喪失である」 「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の世界自然遺産登録は直近のことであり、本書のタイトルはそこからきている。しかし、その裏には、いわゆる自然との共生、つまり奄美の自然と地元民の生き方が未来の人類の生き方の参考になれば、という著者の希望が込められていると思う。