オランダ税務当局から児童手当の「不正受給者」のぬれぎぬを着せられたクリスティー・ロンゲンさん。「（政府が間違いを認めて）お金は戻りました。でも、子供たちに幸せに過ごすべきだった日々を返してあげることはできない」と語った＝オランダ中部レリースタットで2022年4月21日午後4時ごろ、岩佐淳士撮影 あなたは不正に児童手当を受け取っている――。身に覚えがないのに、ある日突然、国から「詐欺犯罪者」呼ばわりされ、多額の返金を求められる。こんなケースがオランダで相次いで起きた。返金を求められた人は約2万6000人。役所内の人為的なミスも一因とみられるが、問題がここまで拡大した背景には、人工知能（AI）を使ったシステムによる「選別」があった。【ブリュッセル岩佐淳士】 2011年、オランダ中部レリースタット。3人の子供を抱えるシングルマザー、クリスティー・ロンゲンさん（46）の自宅に、税務当局から一通の手

ブリヂストンが世界の工場の約4割を減らす大規模なリストラを進めている。仏ミシュランに世界シェア首位の座を奪われ、後発の中韓勢の追い上げで収益力もじりじり落ち込んでいる。電気自動車（EV）や、通信機能を持つコネクテッドカーが中心となる未来の車社会でタイヤ専業としてどう生き残るか。痛みを伴う構造改革の先に、タイヤから派生する新たなビジネスで稼ぐ「第3の創業」を模索する。「先のことはわからない。やめ

ソウル市瑞草区の雑居ビル4階に、米麹の香りが漂う研究施設がある。発酵用の大型タンクが並ぶ韓国酒産業研究所だ。マッコリなど韓国伝統酒の普及活動を担う社団法人で、地域ごとに特色を持つ伝統酒の製法を学べる講座を運営する。3カ月単位でマッコリの製法を学ぶ「一般課程」（定員30人）は、20～30代に人気で受講まで3年待ちという。2009年の講座開設からの卒業生は3000人余り。より専門的な実技を学ぶ「指

「なぜ支店長なのに専用車がないんだ」。みずほ銀行のある支店長は不満を隠さない。システム障害に揺れた昨年。首都圏を中心に約300の支店から法人を担う部門を切り出し、リテール（個人）を担う支店と法人部に再編された。支店長にとって、出世を実感できる専用車にもメスが入る。リテールを担う支店では多くの支店長が使えなくなった。役員でもないのに専用車が付く――。かつて貸し手優位だったころの銀行の名残と言える

札幌地裁が運転差し止めを命じた泊原発。手前に防潮堤が築かれている＝北海道泊村で2017年9月、本社機から竹内幹撮影 北海道電力泊原発1～3号機（北海道泊村）の運転差し止めを命じた31日の札幌地裁判決は、安全性の立証に消極的で、説明責任を果たさない北電の姿勢を厳しく批判した。 「北電の主張立証が尽くされる時期の見通しが全く立っていない。原告に、北電の立証に延々と対応することを余儀なくしている」。判決で谷口哲也裁判長は怒りをにじませた。 判決が重視したのは、原発の設計や構造に圧倒的に詳しい電力会社側の「立証責任」だ。最高裁は1992年、四国電力伊方（いかた）原発の設置許可の取り消しを求めた行政訴訟で、原発の安全性の判断に関する立証責任は原告側の住民ではなく、被告となる国にあるとの考え方を示した。民事裁判では本来、原告側に立証責任があるが、この判例の影響で原発裁判では立証責任が原告と被告で転換す

岸田文雄首相の看板政策「新しい資本主義」の具体化に向けた実行計画案が「骨太の方針」に盛り込まれた。首相は就任当初、分配色を打ち出していた。だが、計画案は投資や成長を重視する姿勢が強くうかがえる内容となっており、“変節”したとも受け取れる。参院選の自民党公約にも反映される見通しだが、「新しい資本主義」は果たして「新しい」のか。【松倉佑輔、松山文音】 「市場だけでは解決できない社会的課題をエネルギー源と捉え、新たな成長を図る」。岸田首相は実現会議のあいさつで、「新しい資本主義」の意義を訴えた。

北朝鮮で製作された新型コロナウイルス感染症の防疫対策を呼び掛けるポスター。「防疫大戦で党中央の別動隊の威容を！」と書かれている＝2022年5月23日、朝鮮中央通信・朝鮮通信 北朝鮮に新型コロナウイルスが広がって以降、北朝鮮国内と電話で連絡を取った貿易関係者らの証言で、北朝鮮の公式報道よりも深刻だとみられる実態が徐々に明らかになっている。検査態勢が整っていないためコロナかどうかは不明の発熱による死者が相次いでいるほか、感染拡大を抑え込むために一時は市場なども封鎖され、「どうやって食べていけばいいのか」と住民からは悲鳴が上がったという。 5月20日前後に北朝鮮北部の住民と連絡を取った関係者によると、この住民は「栄養不足で弱ったお年寄りや子どもたちが発熱し、次々に亡くなっている。近所でも死者が増え、当局者が消毒をしたうえで遺体を運び去った」と語った。

（2次予選・31日） 第93回都市対抗野球大会（毎日新聞社、日本野球連盟主催）の2次予選は31日、各地で行われ、東海は第1代表決定戦でヤマハ（浜松市）が4年連続43回目の本大会出場を決め、予選突破一番乗りとなった。 強さの裏にベテラン勢 2点を追う一回の攻撃。入社11年目の青柳直樹が四球を選んで好機を作ると、入社6年目の藤岡康樹に逆転満塁本塁打が飛び出した。勢いに乗ったヤマハ打線は17安打14得点の猛攻。強さの裏には、経験豊富なベテランの存在がある。 終盤に5点差を逆転してサヨナラ勝ちした26日のホンダ鈴鹿戦は、32歳の青柳が試合を決めた。九回の攻撃前から「打順が回るなら2死満塁」と心の準備を怠らず、現実となった打席でサヨナラ適時打。「勝負どころでやってくれる」と室田信正監督の信頼は厚い。

奈良地裁の判決後に開かれた記者会見に姿を見せた西田幹さんの父裕一さん（右）と母隆子さん＝奈良市で2022年5月31日、川畑岳志撮影 奈良県職員の西田幹（つよし）さん（当時35歳）がうつ病を発症して自殺したのは、長時間の時間外労働への適切な対応を怠ったことが原因だとして、両親が県に約1億200万円の損害賠償を求めた訴訟で、奈良地裁は31日、自殺と過重労働の因果関係を認め、県に約6800万円の支払いを命じた。寺本佳子裁判長は、産業医が職場に労働環境の改善を求めていた点を挙げ、「疾患の悪化を防止する措置を十分にとらず、自殺に至らせた」と県の一連の対応を批判した。 判決によると、西田さんは県教育委員会の教職員課で勤務していた2015年春、うつ病を発症した。職場では主に職員の給与計算を担っていたが、パソコン業務が苦手で同僚らに「しんどい」と訴え、上司に配置転換を懇願していた。

北海道電力泊原発の運転差し止めを命じる判決を受け、「差し止め　認める」と書かれた紙を掲げる原告団ら＝札幌市中央区の札幌地裁前で2022年5月31日、貝塚太一撮影 北海道電力泊（とまり）原発（北海道泊村）の安全性に問題があるとして、道内外の約1200人が北電に1～3号機全ての運転差し止めや廃炉などを求めた訴訟の判決で、札幌地裁は31日、北電に1～3号機の運転差し止めを命じた。谷口哲也裁判長は、北電側が津波対策の安全性を立証できていないとして「津波による事故で原発から半径30キロの範囲内に住む44人について生命や身体といった人格権を侵害するおそれがある」と述べた。2011年3月の東日本大震災以降、津波対策の不備を主な理由に運転差し止めを命じた司法判断は初めて。（23面に関連記事と判決要旨） 原告側は今回の訴訟を11年11月に起こし、運転差し止めと廃炉、使用済み核燃料の撤去を求めていた。震災前に

安倍晋三元首相の後援会が主催した「桜を見る会」前夜祭の費用補塡（ほてん）問題で、サントリーホールディングス（大阪市）が2016～19年の前夜祭に酒類を無償提供していたことが、刑事確定記録や同社などへの取材で判明した。同社で負担額が確認できた17～19年は1年あたり15万円程度で、計約45万円を負担したという。政治資金規正法は企業から後援会など「その他の政治団体」への寄付を禁止しており、同法に抵触する可能性がある。 同社は提供した酒類の量を明らかにしなかったが、同法違反（不記載）で罰金100万円の略式命令が確定した安倍元首相の元公設第1秘書（62）の刑事確定記録によると、17年は計90本、18年計170本、19年計122本のビールやウイスキー、ワイン、焼酎が提供されていた。これらはホテル側の職員が作成した「宴会ファイル」という資料に記載されており、連絡先として同社の電話番号も載っていた。

欧州連合の首脳会議に出席したハンガリーのオルバン首相（中央）やマクロン仏大統領（右）ら＝ブリュッセルで2022年5月30日、ロイター ロシアのウクライナ侵攻を批判する欧州連合（EU）は5月30日、露産原油の禁輸措置で合意。プーチン政権の戦争継続を難しくさせる措置に一歩踏み込んだ。ただし加盟国内の合意取り付けを優先して例外扱いを盛り込むなど、苦しい実情ものぞかせている。 親露のハンガリー反発で協議難航 「対ロシアで結束したメッセージをウクライナへ送ることができた」 EUのミシェル欧州理事会常任議長（EU大統領）は31日未明の記者会見で、そう強調した。露産原油の禁輸制裁を巡っては、依存度が高いハンガリーが強い難色を示し、協議は4週間近く難航。しかし、EUは同国などが主に使うパイプライン経由での輸入を当面除外する妥協案で、合意にこぎ着けた。 ただ、「結束」をアピールするミシェル氏の言葉とは裏腹に