(青土社・2200円) 反出生主義、実存を棚上げしない対話 「こんな自分で申し訳ない」「何のために生きてるのか分からない」。残念ながら、若い世代と接していると、ときどきそうした言葉を耳にする。あるいは「将来子供を作る気になれない」と言う学生。生に前向きになれない理由はさまざまだ。「自分の遺伝子を残したくない」と言う人もいれば、「戦争や貧困や差別がある世界で子供が幸せになるとは思えない」と憂える人もいる。 こうした傾向は、日本では二〇一九年頃から「反出生主義」として知られるようになった。反出生主義とは、一言で言えば「生まれてこないほうが良かった」とする考え方である。究極的には人間は絶滅したほうが良いという主張に行き着くこの思想は、もともとは南アフリカの哲学者デイヴィッド・ベネターらによって提唱され、ある種の思考実験、論理ゲームとして、哲学の文脈で議論されてきたものだ。しかしその思想が、少なく