2月12日、地震の爪痕は残ったままだ。本尊の阿弥陀如来像は庫裏へ移し、倒れかけの本堂はブルーシートが掛けられた。柱は割れ、床は大きく波打っている。真宗大谷派正久寺(しょうきゅうじ)の住職、谷釜了正(たにがまりょうしょう)さん(75)=志賀町里本江=は「うちはまだいい方。再建できない寺はたくさんあるでしょうからね」とつぶやいた。 ●日体大の学長経験 教育者・学者の道を歩み、長く東京で暮らした谷釜さん。日体大の学長を6年7カ月務め、2017年5月に定年で実家の寺に戻るまで約40年、常駐の住職はいなかった。その間、寺を守ってきたのは門徒だった。 東京生活が長かったからこそ、この土地の信心深さが痛いほど分かった。「門徒総代の方が得度までして代わりに掃除や草むしりなどをずっとしてくれたんです」。感謝の思いは尽きない。 1月1日の地震の際、家族は一斉に外へ飛び出した。長く激しい揺れに「小学3年になる孫