地理と都市文化の関係 都市を語る上での欠かせない観点のひとつとして、地理と文化の関係を挙げることができる。都市に花開く文化は、常にその場所性に紐付けられて語られてきたし、地理と都市文化が密接な関連を持つことを、我々は経験的にもよく知っている。なかでも、地理的に広範な範囲に及ぶ大都市には、時代とともにさまざまな場所で都市文化が勃興し、あるいは衰退した歴史が刻まれており、その布置自体が、都市の発展の過程を雄弁に物語る。試みに、我々にとって身近な大都市である、東京の地名を思い浮かべてみることにしよう。浅草、上野、銀座、新宿、渋谷、原宿、代官山──いずれの地名も、特定の時代をその背景に持った都市文化のイメージを、強く想起させることだろう。 本論では、この東京において、次なる都市文化の胎動がいかなる場所で始まっているか、ひとつの仮説を提示することを試みることとしたい。ただし、筆者は都市論を第一の専門