悲観論のほうが流行る世相は哀しい。大震災や原発事故、それを克服できないどころか、このタイミングで大増税や年金カットを持ち出す政治、そして世界の経済危機――確かに国民を意気消沈させるには十分な背景はある。 政治家や官僚、経営者が庶民から富を吸い上げて街角景気を悪化させていることもある。が、それだけではない。彼らには「不況風がうれしい」裏事情がある。 官僚はわかりやすい。財政危機を強調すれば増税の理屈が立つし、年金カットも押し通せる。小泉政権時代に盛んに使われた「改革の痛みに耐えて」というレトリックである。さらに、 「景気が良ければ民間に自由に活動させておけばいいわけで、官僚の仕事はなくなる。予算を使い、権限を強化するには不況のほうがいい。『官僚は不景気が好き』といわれる所以です」 財政学の権威、大正大学経済学部の藤岡明房・教授はそう喝破する。藤岡氏は、将来も社会資本として残る震災復興事業を、