ブックマーク / www1.odn.ne.jp (104)

  • 山本直樹『レッド』1巻 - 紙屋研究所

    直樹『レッド』1巻 『ビリーバーズ』で果たせなかったもの 最初にちょっとおさらい。 すでに山の『ビリーバーズ』についての感想のところで書いたとおり、山はオウム事件に際して、 「一連のオウム騒動のあと、『似た騒ぎが昔あったな』と思い出して、連合赤軍関係のを読んでみた。すると『これがおもしろかった』。 『閉鎖された環境のなかで観念だけがどんどん地面から浮き上がってきて、ついには暴走する。そういった怖さみたいなのを描いてみたいなと……』」(中野渡淳一『漫画家誕生』p.124) ということで『ビリーバーズ』を描いた。 『ビリーバーズ』はオウム事件ではなく、オウム事件を契機にして山が連合赤軍事件を知ることにのめりこみ、まさしく連合赤軍事件を描いたものであった。 連合赤軍事件が他の事件と違うのは、当事者たちの詳細にして膨大な記録が存在することである。その記録を読むうちに、山が「魅せられて

  • 山本直樹『ビリーバーズ』 - 紙屋研究所

    直樹『ビリーバーズ』 ※『レッド』の感想はこちら 『ビリーバーズ』はオウム事件を描いたものか 新興宗教っぽい団体に入っている男2人、女1人の計3人が孤島で独特の修行をする顛末を描いた物語である。 評論家の呉智英は山直樹『レッド』の書評で「テーマは連合赤軍事件である。既に七年前の『ビリーバーズ』(小学館)でオウム真理教事件を描き、次は連合赤軍事件だろうという予感はあったのだが、その期待に応えてくれたことになる」(「ダ・ヴィンチ」07年12月号)とのべた。 ここでは呉は『ビリーバーズ』=オウム事件という把握をみせている。 やはり漫画解説者である南信長も『ビリーバーズ』について「まあ、オウムとかそういう新興宗教的なものがモチーフとなっていましたよね」(「SIGHT」vol.23)と指摘している。 だが、評論家の仲俣暁生が、『ビリーバーズ』は「言われるほどオウム事件の影は強くなくて、オウムの

  • 益田ミリ『結婚しなくていいですか。』

    益田ミリ『結婚しなくていいですか。』 不意打ちをくらう 要注意! サブタイトルが『すーちゃんの明日』となっており、著者の『すーちゃん』の続編にあたる作品らしいのだが、それは未読。 1話、2話、3話と読んだだけの段階で「うわーなんだ、このほのぼのとしただけのしょうもない漫画は」と思ってしまった。「すーちゃん」という35歳独身、カフェ店長のどうということもない日常がつづられているだけだったからである。 ところが、4話目に、すーちゃんの友だちでやはり40ちかい独身女性の「さわ子」が登場し、 「あたし、このまま ゆっくり老いていくのかな 老いていくのは 仕方ないけど、ただ、 セックスはしたい あたしのこのカラダを もっと謳歌しておきたい」 というセリフが入りドキリとさせられる。この文体はすでに「ほのぼの」ではない。この絵柄でこのセリフはひきょうだ。不意打ちである。男性の側から欲望の対象として消費さ

  • 吉住渉『スパイシーピンク』1巻

    吉住渉『スパイシーピンク』1巻 またしても漫画家が漫画家を描いた漫画をとりあげる。 ところがこちらは基軸は「漫画漫画」ではなく「恋愛漫画」である。 女性漫画誌「コーラス」に連載されている作品で、作者・吉住渉も書のあとがき漫画において「今回のヒロイン・桜は漫画家です。なぜそうしたかというと…『「コーラス」だから主人公はやっぱり社会人がいいよね』『仕事なんにしよっかな』『調べなくてもわかるから漫画家でいっか』 こんな理由です。すみません 安易で」と書いているように、漫画家を描こうとしたのではなく、恋愛を描こうとしてその設定に漫画家をもってきたというだけなのである。 そして、きわめて平凡なストーリーだ。少なくとも1巻は。 とりわけ、クイーンズコミックスにおける前作『チェリッシュ』が設定を複雑にしたことと比べると設定も展開もエピソードもその「平凡」さがきわだつ。 「平凡」と書いたが、かといって

  • 小林薫『奥様は漫画家』

    小林薫『奥様は漫画家』 小林薫が描いた「漫画家の漫画」である。小林薫といってもいろいろいるわけだが、おそらくそのどれでもない小林薫である。 この漫画家を評して、「うだうだWeblog」というブログは次のように書いた。 http://na-inet.jp/weblog/archives/2005/09/post_57.html 「小林薫の面白さは『すっぽ抜け』にある。 真面目一槍のピッチャーが一球入魂の精神で投げたボールがすっぽ抜け、あらぬ方向に飛んでいく。その結果は悲惨であり爆笑ものである。……小林薫の作品、特に近作は、キャラクターたちにすっぽ抜けの悲劇を演じさせ、読者の爆笑を喚起させる傾向が強い。作は漫画家と編集者の夫婦が成立する、その前後を描いた連作短編集であるが、日常生活とハードな仕事との両立を目指すべく、物凄いエネルギーで困難に立ち向かっていく主人公の大林薫子の『すっぽ抜け』が

  • 「ワンピース」がスマイルな件:ヤマカム

    2008年06月23日(月) ルフィが天竜人を殴ったもんだから、シャボンディ諸島が大混乱になっています。というわけで、ここ最近の「ワンピース(AA)」の面白さがおかしなことになっています。今回の見所は、ルフィが初めて他の海賊と共同戦を張って海軍と闘ったりしましたが、最大のキモはドフラミンゴの一言でしょう。 世界最強の白ひげ海賊団には、海軍部だけでなく七武海まで参戦するようです。海軍部・七武海VS白ひげ海賊団。一つの海賊団相手に凄い戦力の割き方です。しかし、海軍と七武海はやはりグルでしょうか、三大勢力というより政府(海軍・七武海)と四皇で二大勢力と言ったほうがシックリきます。 ガープが登場した時に、新世界に君臨する海賊の話がありました。グランドラインの後半の海に皇帝のように君臨する4人の大海賊。世に四皇と呼ばれているそうです。この4人をい止める力として海軍部と王下七武海が並び、この三

  • 「さよなら絶望先生」143話のネタが面白い件:ヤマカム

    2008年06月17日(火) ジャンプスクエアは凄いです。創刊号ではCMをバンバン流して宣伝しまくり、月刊少年ジャンプの看板漫画の移籍や週刊少年ジャンプで連載していた実力ある漫画家を集めました。また読み切り作品も、ビックリするぐらい豪華で、集英社以外で描いている漫画家の方まで引っ張ってきました。特に鳥山明先生と桂正和先生の合作はビックリしました。創刊号では発行部数50万で、後に10万部増版。また、単行発売時には、SQ.コミックスフェア開催と称して大々的に宣伝していました。集英社のジャンプスクエアに対する力の入れようが分ります。 月刊ヤングジャンプは凄いです。創刊号にも関わらず、ほとんど宣伝する事なくひっそりと誕生。未だに雑誌コードを取っていない為に、ヤンジャンの増刊扱いで、殆どヤンジャンで打ち切られた方々ばかりです。唯一引っ張ってきたのが「華麗なる卓」のふたなつ一輝先生で、今号は4

  • 『手塚治虫傑作選』『平和の探求 手塚治虫の原点』ほか

    『手塚治虫傑作選』 『平和の探求 手塚治虫の原点』ほか 『傑作選』が出たことへの驚き 屋に『手塚治虫「戦争漫画」傑作選I』『手塚治虫「戦争漫画」傑作選II』『手塚治虫傑作選「瀕死の地球を救え」』が次々に並び、いささかおどろいている。 なぜ今? と思ったからだ。 漫画評論家の石子順は、近著『平和の探求 手塚治虫の原点』の「あとがきにかえて」のなかで「この〔2007年〕七月、八月には『手塚治虫「戦争漫画」傑作選I・II』(祥伝社・祥伝社新書)が一般教養新書として刊行されました。……戦後六十余年たってようやく手塚治虫の戦争漫画がクローズアップされ、生命を惜しみ、生命を守ることについての主張が強まってきたという感じがします」とこの動きを高く評価している。 むろん、手塚治虫をこういう角度から評価し、その角度で選集が編まれ一般教養新書として大々的に出されることをぼくは歓迎している。 「なぜ今?」とお

  • 高世えり子『理系クン』

    高世えり子『理系クン』 「理系男子に恋をした!」というオビからわかるとおり、理系研究者である自分のパートナーについてのエッセイコミックである。 ——相手の反応かまわず、自分の専門の話に暴走。 ——やたら事務的に女性の要求を聞いて、脳内検索をするメンタリティ。 ——距離感のとれない、そして意味がわからないコミュニケーション。 ——オシャレ力のなさ。 正直なところ、あまりに類型的な「理系男子」像だ。よくそういうやつがいる、というより、よくそういうふうに描かれる、というニュアンスの方が強いのだが。 むしろ不思議なのは、ではそれほどまでにわけのわからない人間と、著者・高世はなぜつき合い続けたのかということである。 デートで会話が続かないために、高世が相手の専攻をくわしく聞くと、次第に饒舌になりだし、あいづちに乗せられて、ものすごい勢いで専門的なことを語りだす、というのである。 高世は「へーすごーい

  • よしながふみ『フラワー・オブ・ライフ』

    よしながふみ『フラワー・オブ・ライフ』 無条件で自分を受け入れてくれる居場所 雨宮処凛・萱野稔人『「生きづらさ」について』の評を書いたとき、精神的な「生きづらさ」の根源の一つに、たえず高度なコミュニケーションによって自分の居場所を構築し、そのなかで自分の価値を証明せねばならず、そこに疲れ果て、あるいはそのコミュニケーション合戦に敗れたものは「いじめ」や「リストカット」の「罰」を受けることになってしまう、ということをぼくは紹介した。 そして、ぼく自身の体験として、ぼくがいる左翼組織は、無条件で自分を受け入れてくれる居心地のいい場所になっている、ということを書いた。 ぼくのこの書評について、ちょっとソーシャルブックマークがついているんだけど、そこに「右翼組織でも宗教組織でも同じじゃね?」と書いている人がいたけど、居場所の問題だけでいえばたしかに同じだといってもいい。 無条件で自分の存在を認めて

  • 同人ゲーム製作:こすぷれ喫茶娘々

  • 翡翠亭

    翡翠亭HPにようこそ。 同人、美少女イラストコンテンツが含まれておりますので 苦手な方はご遠慮ください。 ↑のイラストからお入りください。

  • TAKUYA MIZUSHIRO HP

    <BODY> <P>このページを表示するには、フレームをサポートしているブラウザが必要です。</P> </BODY>

  • 大西祥平・吉本浩二『勝ち組フリーター列伝』

    大西祥平・吉浩二『勝ち組フリーター列伝』 書、『勝ち組フリーター列伝 』は、フリーターの中から「勝ち組」になったといわれる7人を取材して漫画化したものである。 AVの転売からおもちゃオークションにいたるまでセコいトレードで年収1000万円にのぼりつめた人 わらしべ長者のようにステップごとにもうけの幅をあげていき、最終的に「能力」=文才と料理の才能を売ることで年収3000万円となった魚柄仁之介 2億円かせいだデイトレーダー 洞窟で43年間くらした人 それほど高くない収入ながら持ち家を沖縄で手に入れた人 「ギャル革命」で有名になったギャル社長 フリーターから区議になった民主党議員 企画にするために「勝ち組フリーター列伝」という共通項を無理やり探し出して、作中で取材した大西と吉が教訓めいたことを叫ぶ体裁になっているのだろうが、こういうくくりや説教ははっきりいって余計だ。 商業的なことを度外

  • 神は仰いました。加賀愛は大活躍だと:ヤマカム

    2008年07月13日(日) 何においても復帰というのは嬉しいものです。桐山光侍をご存知でしょうか。週刊少年サンデーで「戦国甲子園」を描いた後に、週刊少年ジャンプで「忍空」を連載開始。アニメ化もして大ヒット。「ドラゴンボール」連載終了後のジャンプの看板になるかと思われました。しかし、何の説明もないまま突如連載は中断してしまいました。その後、月刊少年ジャンプで2回掲載させ強引に終わらせてしましました。後に桐山先生は当時の事を「コミック・フィギア王」で以下のように語ってらっしゃいました。

  • きらたかし『赤灯えれじい』花沢健吾『ボーイズ・オン・ザ・ラン』朔ユキ蔵『ハクバノ王子サマ』

    きらたかし『赤灯えれじい』 花沢健吾『ボーイズ・オン・ザ・ラン』 朔ユキ蔵『ハクバノ王子サマ』 好きな漫画、気にしていた漫画がいろいろ終わったなあ。いや、連載はもっと早くに終わっているんだけど、単行の形で次々終了したんだわさ。 きらたかし『赤灯えれじい』。 花沢健吾『ボーイズ・オン・ザ・ラン』。 朔ユキ蔵『ハクバノ王子サマ』。 チーコがいなければサトシは自立できなかった 『赤灯えれじい』は終わってみれば、ぼく好みのいい作品だった。ぼく的基準からであるが、この作品は名作である。 ※ぼくの以前の『赤灯えれじい』評はこちら http://www1.odn.ne.jp/kamiya-ta/sekitou-elegy.html 『赤灯えれじい』は、フリーターであり、いじめられっ子でヘタレだったサトシと、やはりフリーターで、ケンカっ早くて気っ風のいい美少女・チーコとの恋愛物語であるが、最初の評で書い

  • kashmir『○本の住人』 - 紙屋研究所

    kashmir『○の住人』 「まるほんのじゅうにん」と読む。 サイト「ネコにテルミン」の人なんだが、そう言った方が通りがいいとは限らないので、そう換言しても意味ないんだけども。 メガネ&ショートの小学校4年生の蓼科のり子(のりこ)が主人公。こいつは何の変哲もない小学生なんだが、その兄は児童向け絵、というか意味不明の奇書を描いているペド疑惑のあるオタク。そしてこの兄妹をとりまく異常な同級生や編集者たちの織り成す4コマ漫画なのである。 と、いま主人公ののりこを「何の変哲もない」などと書いたが、もちろん実際には「変哲」ありまくりで、こんなリアル小4はいない、というくらいの「苦労人」だ。つか、単に20代くらいのオタク男のツッコミを体現しているキャラクターで、リアル小4女子がこんな鋭いツッコミを入れてくれるなら、毎日その小4女子と飲みに行って笑わせてもらえるだろう。 ばらスィー『苺ましまろ』の美

  • 6月のランキングをゴルゴ31さんと振りえる

    山田 の発言:忙しいところすみません 31 の発言:まあ今週は夜行性になっているのでこの時間で大丈夫w 山田 の発言:オレが今月読んだものランキングという超俺様企画なんですが宜しくお願いします 31 の発言:じゃあ10位のFLIP-FLAPからいきますか。 山田 の発言:これは結構他のサイトでも評価高いですよね。:好き好き大好きさんとかでも。 31 の発言:そうですね。1巻完結で読みやすいからかレビューも盛んにされている感じで。 なんにしろこの作品は「面白いこと」に対する情熱が異常なのが素晴らしいです。面白いというか楽しいかな。 山田 の発言:ピンボールに集中しているシーンが上手いんですよね。 UFOの記録抜いた時など、背景キラキラ光った星でしたから、そして記録を抜いたわけですけど、ただピンボールを楽しんでただけというのが凄く印象的です 31 の発言:今時ピンボール?とい

    tanemurarisa
    tanemurarisa 2008/07/07
    「振りえる」って・・・(汗)
  • 紙屋研究所

    とあるマルクス主義者による、マンガ、、路傍の広告にたいする、批評・感想をアップしています。感想や批判をメールなどで気軽にいただけるとうれしいです。

  • 高殿円・今本次音『オーダーメイドダーリン』

    高殿円・今次音『オーダーメイドダーリン』 恋愛とは「変化する関係性」である 紀伊国屋書店のゆめタウン博多店に30代独身女性のための特別企画コーナーがあって、そこで置かれていた。なんかそのコーナーで座り込んで超熱心にいくつかのを読んでいる女性が数人いたので、気圧されてのぞいてしまいつい買ってしまったのである。 書の発行は2006年なのでもうかなり時間がたっている。発刊当時は気づかなかった。 書のサブタイトルが「幸せの王子様(ベストパートナー)の育て方」となっているように、王子様にめぐりあうのを待つのではなく、パートナーを自分に合うようにカスタマイズしてしまおう、という趣旨のハウツーコミックである。 書いたのはライトノベルなどの書き手である小説家の高殿円。 安野モヨコ『ハッピーマニア』を持ち出すまでもなく、人間、ある年齢までは「自分に合う相手との出会い」として恋愛結婚をとらえている。