マニフェストと言えば、総選挙(衆院議員選挙)。総選挙と言えば、マニフェスト。各政党が作成し、選挙の前に配布する政権公約集のことである。この用語は、有権者の間で広く一般的に認知されるようになってきていると思われる。しかし、マニフェストは日本の政治をより良くすることに役立っているのだろうか。選挙の結果は、各党が作成するマニフェストに対する支持・不支持を反映しているのだろうか。 マニフェスト選挙18年、続く自民党の圧勝 マニフェストの起源は19世紀における英国の総選挙とされているが、日本の総選挙で各政党が初めてマニフェストを作成・配布したのは、18年前の2003年11月である。2003年10月の改正以前の公職選挙法では、枚数、サイズなど厳密に規定されたビラ以外、政党が政策資料を作成して頒布することすら禁止されていたのである。 それから18年。マニフェスト選挙元年に生まれた赤ちゃんの多くは、今年1
気候変動と感染症は今や私たち人類の共通の課題です。一つずつでも大変ですが、温暖化による永久凍土(何年も凍結したままの土)の融解が新たな感染症を発生させる、という複合的な問題も懸念されています。真相を深掘りしましょう。 北極圏では北欧、シベリア、アラスカがぐるりと北極海を囲んでいますが、永久凍土が広く分布するのはシベリアとアラスカです。北欧は北大西洋海流(暖流)と偏西風のおかげで少し暖かく、湿った空気が雪を降らせます。氷河期、北欧は積もった雪が固結した氷河で覆われ、地面が凍結から守られました。一方、雪の少ないシベリア、アラスカでは冷気によって地下数百メートルまで永久凍土層が発達しました(図1、2)。 アラスカの先住の人々は永久凍土層に穴を掘り、サケを貯蔵する冷凍庫として利用してきました。凍土は墓地にもなります。第一次世界大戦中の1918年、のたった5日の間に人口150人の小さな村の半数が謎の
今年最悪の企業統治スキャンダルは、東芝による株主圧力問題だろう。6月10日付の第三者調査報告書によると、東芝は経産省と結託し、東芝株を4.43%保有するハーバード大学基金の議決権行使に圧力をかけ、その他の外国人投資家も懐柔した。 また、三菱電機では、労務問題や品質不正などが相次ぎ、6月29日には鉄道車両向け空調装置において35年以上にわたる不正検査の問題が発覚した。杉山武史社長は組織的な不正行為と認め、引責辞任を表明した。 東芝と三菱電機のガバナンス体制は、「脆弱」であったのか? 表向きは決してそうではない。本来、東芝はガバナンス優等生と目されてきた。2003年に米国型ガバナンスといわれる指名委員会等設置会社に移行し、以降徐々に社外取締役の構成比を高めてきた。 2020年に綱川智社長(当時)が会長、車谷暢昭会長が社長に就任したわずか1年後、株主への圧力スキャンダルの渦中の車谷氏は辞任、綱川
アフガン首都空港付近で自爆テロ。ISが犯行声明(写真:The New York Times/Redux/アフロ) アフガニスタン情勢が急展開した。アフガニスタンに駐留する米軍・NATO(北大西洋条約機構)軍が同国から撤退を開始すると、イスラム主義組織ターリバーン(以下、タリバン)が攻勢をしかけ、あっという間に首都カーブル(以下、カブール)を包囲。アシュラフ・ガニー(以下、ガニ)大統領は国外に脱出し、政権は瓦解した。 米軍のアフガニスタンからの撤退について、米国とタリバンはトランプ大統領時代の2020年2月に合意していた。すったもんだの末、その合意は履行されなかった。しかし、ジョー・バイデン大統領が2021年4月、9月11日までに駐留米軍を撤退させると発表。こちらはすんなりと進み始め、NATO軍もほぼ同時に撤退を開始した。そして、その結果がタリバンの一方的勝利である。 アフガニスタン情勢をフ
間近に迫った2回目の東京五輪に対し、1回目の1964年大会における熱気の再現を期待する声が多い。高度成長期の「成功体験」と結びついた64年大会「神話」の真実は何か。東京の都市論に詳しく、五輪や万博に関する著書もある東京大学の吉見俊哉教授に聞いた。 東京で2回目の五輪開催が近づいています。前回の64年大会と今回の間で日本社会はどう変わったのでしょうか。 吉見俊哉氏(以下、吉見氏):「より速く、より高く、より強く」は五輪のモットーとして知られるが、64年大会ではそこにより速く、より高く、より強く「成長する」という意味が隠されていた。当時は高度経済成長期で、五輪を起爆剤として右肩上がりの成長を加速していった面がある。 しかし、右肩上がりの成長は70年代を経て、遅くとも80年代までで終わり、90年代以降、平成の30年間の日本はそれまでのようにはうまくいかなくなった。90年代半ば以降、日本は成長社会
考えていることがうまく言葉にできない。文章がうまく書けない。こういった悩みを抱える人は多いだろう。その悩みを解決するヒントになるのが、『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』と『「言葉にできる」は武器になる。』だ。今回は著者の藤吉豊氏と梅田悟司氏に、「言葉」について語っていただいた。第3回のテーマは、表現と想像力について。 「本当の1行目」は、全文書いてやっと見えるもの 梅田悟司氏(以下、梅田):僕の仕事は短い文章にまとめることが多いですが、藤吉さんのように長い文章を書く方が考える「言葉の持つ力」って何でしょうか。 藤吉豊氏(以下、藤吉):僕は主に、書籍のライティングに携わっているので、「本全体でストーリーを完結させていく」という考え方をしています。1冊の本によって、読み手の生活や行動に何らかの良い変化を与える。やっぱりこれが、文章や言葉の持つ力だと思います。そ
だが、2021年4月中旬、現地を訪れると観光客はほぼ皆無。日中1時間以上、駐車場から岬の先端付近にある有名な「愛の鐘」まで約500mの遊歩道を何度か往復したが、ぽかぽかの陽気にかかわらず、数組の観光客とすれ違うだけだった。 人影がまばらなのは現地だけではなく、熱海から修善寺までの移動に使った特急踊り子号でも1車両最大72席中、人が座っているのは4席のみ。修善寺から恋人岬へのバスに至っては、途中から他に乗客が1人もいなくなった。 「コロナ禍の中では、観光地に人がいないのなんて当たり前」。こう思う人もいるかもしれないが、話はそう単純ではない。確かにコロナ禍は観光地に打撃を与えているものの、その影響は国民の“自粛疲れ”などを背景に一時期ほどではなくなっているからだ。 西伊豆の代表スポット「恋人岬」が出遅れる理由 実際、緊急事態宣言が4月25日に1都2府1県に発令されたにもかかわらず、連休中の東京
今回は「リーダーシップ」についてあれこれ考えてみる。 先日、「ついに!」というか、「あらら~」というべきか、新型コロナウイルス感染疑惑が私事となる“事件”が起きた。 私自身は、かなり徹底した感染防止策を1年以上続けているのだが、たまたま先週会った友人から、「昨夜から体がだるく、熱が38度もあるので、コロナに感染しているかもしれない」と連絡が来たのである。 初のPCR検査、だが結果が来ない… 友人と会ったときには二人ともマスクはしていたのだが、その後、私のクルマに乗せたりしたので、感染の可能性はゼロではない。私は、自宅から徒歩2分のところにあるマンションに住む母と頻繁に接しているので、万が一感染していたら母の命が危なくなると、一気に青ざめた。 その後、友人はかかりつけ医のところに行き、熱以外に疑わしき症状はないし、レントゲン検査も受けたところ「大丈夫でしょう」との診断だったそうだ。ところが、
電力不足が深刻さを増している。最大の要因であるLNG(液化天然ガス)の不足はなぜ起きたのか。その背景には、電力自由化や再生可能エネルギーの拡大といった電力システムの変化がある。発電事業者が適正なLNG調達量を判断しにくくなっていたのだ。 今回の電力のひっ迫には大きく2つの要因がある。本誌で既報の通り、寒波による冷え込みで電力需要が増加したこと。加えて、火力発電燃料のLNGの不足である(「電力市場の異常な高騰はまだまだ続く? LNG供給に乱れ」)。 確かに寒波は厳しいもので、電力需要は全国で増加している。ただ、ここまでの需給ひっ迫とJEPX(日本卸電力取引所)価格の高騰を招いた最大の要因はLNGの不足の方だ。中国と韓国によるLNG輸入量の増加、産ガス国での生産設備トラブル、新型コロナ影響によるパナマ運河の通関手続き遅延などが絡み合っている。 ここで一つ、疑問が湧く。いくらLNGの需給がタイト
「私たちは平和に集会を開いています。ここには若者がたくさんいる。こんな仕打ちはやめて下さい」。10月16日夜のバンコク。盾を持って並び威圧する警察の機動隊に対し、一人の女性が手を合わせこう懇願していた。 彼女の背後には現政権や王室などタイの支配層に抗議するために集まった多数の市民がいた。警察は解散するように求めたが、人々は耳を貸さず「プラユット(首相)は出ていけ!」「封建主義は滅びよ!」と口々に叫ぶ。業を煮やした警察は強硬手段に出た。冒頭の女性の訴えもむなしく、機動隊は前進を始め、デモ参加者に対する放水も始まる。最初に放たれたのは通常の水だったが、その後放射されたものには催涙ガスが混じっていたようだ。これを浴びると目や喉がヒリヒリと痛み、皮膚にはやけどしたような痛みが走る。「香港(の民主化運動)と全く同じ光景だ」。逃げ惑う人々を目前に、タイのある報道関係者はこうつぶやいた。 7月頃から活発
旭が丘団地は日本住宅公団(現UR都市機構)が建設し、1967年から入居が始まった大型郊外団地だ。東西800m以上にわたり40以上の棟が並ぶ高度経済成長期の団地の典型で、カンヌ国際映画祭に出品された是枝裕和監督の映画「海よりもまだ深く」の舞台になったことでも知られる。 そんな旭が丘団地にC氏が入居したのは約45年前。「当時はみんな子育て世帯で、それはもうにぎやかだった」。しかし今、その面影はない。 取材班が現地を訪れたのは、8月も終わりを迎える日曜の午後。高齢化でいわゆる「昭和の郊外団地」が活気を失いつつあることは、かねて認識していたが、いざ足を運ぶと、団地全体がまるで眠っているかのような静けさだ。コロナ禍の影響もあるにせよ、人影は全くなく、セミの声だけが異常に響く。そんなとき、団地内の小さな広場に体を動かしに姿を見せたのがC氏だった。 団地の部屋からも出ない 団地の光景を一変させた原因は、
私は講演会に呼ばれたときに、担当者の方に必ず聞くことがある。 企業の場合は「女性の役員は何人くらい、いらっしゃるんですか?」、地方自治体の場合は「これからは地方地自体が色々と頑張らなきゃいけない時代ですね」といった具合だ。 ん? 質問のトーンが違うじゃないかって? はい。そうです。後者は質問とは言い難い、が、これでいいのです。 常勤公務員の「枠の外」にある存在 「女性活用」というワードはほぼ完全に企業にも浸透しているので、大抵の場合、この質問から“その企業が直面している問題”に話は転がっていく。 一方、地方自治体では、高齢者や児童に関する相談への対応など住民に寄り添う仕事が増えているので、「いや~、実は……」という具合にさまざまな話題に広がるのだ。 そこで決まって登場するのが、「非正規公務員」問題だ。 非正規公務員とは、「常勤公務員」の枠外で任用されている「非常勤の公務員」のこと。行政のス
香港立法会選挙の立候補届け出が7月18日に始まった。民主派の立候補はどこまで認められるのかに、世界の注目が集まっている。香港国家安全維持法が施行されてから3週間。その間の香港政府の行動を分析し、その行動原理を解き明かすことが、そのヒントになるかもしれない。 香港国家安全維持法(国安法)は6月30日夜に香港での現地公布と同時に施行された。その直後の7月1日には新型コロナウイルスの流行が広がって以降最大規模の抗議活動が行われ、国安法に基づいて10人が逮捕された。 10人逮捕という事実をどう分析すべきだろうか。国安法施行前は「大物民主活動家が逮捕される」という噂もあり、一部の影響力の強い民主活動家のみに適用されると考えていた人もいた。そうした人にとっては、必ずしも著名ではない一般の抗議者が逮捕されたことは衝撃だったことだろう。国安法が、本気で抗議活動を鎮圧するものだと感じたはずだ。 一方で、7月
取材陣が待ち構える中、チャーター機のタラップから降りてくる医療チームを現地の要人らが拍手で出迎える。その次は横断幕を掲げながらの記念撮影だ。中国を象徴する赤地に「ともに乗り越えよう」などと鼓舞するスローガンが書かれているところは、いかにも中国らしい。 大々的に執り行われる式典はこれがただの医療支援事業でないことを物語る。西側諸国はプロパガンダ(政治宣伝)が目的の「マスク外交」と見なす。 中国当局が初期対応を誤ったために新型コロナが世界中に拡散した。中国に付いてしまったそんなマイナスのイメージを、「世界に手を差し伸べる国」というプラスのイメージに転換するのが狙いだ。 150カ国支援の真の狙い 中国が重点的に支援したイタリア、インドネシア、パキスタンといった国々を眺めると、ある共通点が浮かび上がる。その多くは中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が2013年に打ち出した広域経済圏構想「一帯一路
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