いまから7年ほど前、在外研究のためにインドの首都デリーに滞在していた時の話。受入れ先の研究機関はデリー大学の北キャンパスにあり、近くには多くの店が軒を連ねる賑やかな一帯が広がっていた。ある日、飲食店が立ち並ぶ大通りをキャンパス沿いに歩いていると、見慣れない派手な看板が目に留まった。よく見ると、インドではお目にかかったことのないクレープ店で、メイド服を着た女の子のキャラクターとピンクを基調とした店構えが、奇妙なほど周囲から浮き立っている。好奇心から店のなかに入ってみると、数名のインド人女性がメイドの格好をして働いており、謎は深まるばかりだった。 しかし、店内に日本人らしき男性2人の姿があったので、こちらから声をかけて話をしてみると、疑問はすぐに氷解した。彼らは、インドで新事業を立ち上げたばかりの日本企業の社員だった。この会社は、日本国内だけでなく東アジアや東南アジアの国々でも、うどん・そば店