ブックマーク / honz.jp (96)

  • 『空をゆく巨人』国境を越えた友情を追う - HONZ

    第16回開高健ノンフィクション賞受賞作は川内有緒『空をゆく巨人』に決定した。 ノンフィクション好きはこの作者の名に見覚えがあるかもしれない。『バウルを探して地球の片側に伝わる秘密の歌』(現『バウルの歌を探しにバングラデシュの喧騒に紛れ込んだ彷徨の記録』幻冬舎文庫)で第33回新田次郎文学賞を受賞した実力派なのだ。バングラデシュの「バウル」という吟遊詩人を追い求める旅は奇跡のような物語だった。 今回の作品は中国人の世界的現代美術家、蔡國強と福島県いわき市の会社経営者、志賀忠重との強い友情を追ったドキュメンタリーだ。 蔡國強という名前を知らなくても、北京オリンピックの開会式で空にビッグフッドの花火を打ち上げた人、と聞けば思い浮かぶ人も多いだろう。1957年に福建省泉州に生まれた蔡は墨絵作家の父の血を引く生まれながらのアーティストだ。文革が終わり、自由に芸術作品の創作ができるようになると、蔡は

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    te_k000 2018/12/23
  • 『フェルメール』写真家・植本一子のフェルメール「全点踏破」の旅 - HONZ

    まだ肌寒い3月、成田空港から11時間のフライトを経て、あなたはオランダ・アムステルダムに降り立った。隣には写真家の植一子さんがいる。ここからあなたの旅が始まる。オランダ・ドイツ・オーストリア・アイルランド・イギリス・フランス・アメリカー7カ国14都市、17の美術館を巡る旅。全部で35作品、あなたはフェルメールに会いに行く。 あなたはフェルメールについて、どれくらい知っているだろうか。好きなあなたなら、『フェルメール 光の王国』(成毛のレビューはこちら)を一度昔読んでいるかもしれない。あなたは、知識や情報を何も持たないまま、最初の目的地、オランダのデン・ハーグにある「マウリッツハイス美術館」に足を向ける。異国の美術館を訪れることに少し緊張している。 このように、あなたが実際に旅に出たような錯覚に陥るのは、植一子さんの文章が、美術館に流れる空気の流れと、彼女の揺れ動く心を緻密に描き出して

    『フェルメール』写真家・植本一子のフェルメール「全点踏破」の旅 - HONZ
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    te_k000 2018/12/17
  • 異なる道筋で進化した「心」を分析する──『タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源』 - HONZ

    タコというのはなかなかに賢い生き物で、その賢さを示すエピソードには事欠かない。 たとえばタコは人間に囚われている時はその状況をよく理解しており、逃げようとするのだが、そのタイミングは必ず人間が見ていない時であるとか。人間を見ると好奇心を持って近づいてくる。海に落ちている貝殻などを道具のように使って身を守る。人間の個体をちゃんと識別して、嫌いなやつには水を吹きかける。瓶の蓋を開けて、中の餌を取り出すことができるなどなど。 タコには5億個ものニューロンがあり(これは犬に近い。人間は1000億個)、脳ではなく腕に3分の2が集まっている。犬と同じニューロンってことは、犬ぐらい賢いのかなと考えてしまいそうになるが、タコは哺乳類らとは進化の成り立ちが根的に異なるので、単純な比較は難しい。では、いったい彼らの知性はどのように生まれ、成り立っているのか。神経系はコストの高い器官だが、それが結果的に生き残

    異なる道筋で進化した「心」を分析する──『タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源』 - HONZ
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    te_k000 2018/12/16
  • ナニワの病理学教授の本! 『(あまり)病気をしない暮らし』 - HONZ

    『こわいもの知らずの病理学講義』が7万2千部に! ということでウハウハだという大阪のおっさんこと、ナニワのレビュワー仲野徹先生の新刊登場! 「2匹目のドジョウを狙う」と公言する今回は、ダイエットフェチとしての極意から、お酒との賢い付き合い方、風邪をひいたらどうするか、そしてがんにならないための生き方に至るまで、病気と健康をテーマに笑い語ります。 あのナカノ先生の書いたものであるからには、おもしろくないわけがないのであーる。 そんな期待大の気持ちで読みはじめたわけですが、その期待は裏切られず。笑撃とともに新たな知見を得て清々しく読み終えたのでありました。 昨今のダイエットなどによくあるように、「一点突破」で無理筋な内容を伝えるわけではまったくなく、身体が不調となる「病気」について、いったい何なのかを大から説いていきます。さすがの知識の土台に支えられつつ、時に東京ものにはよくわからないナニ

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    te_k000 2018/12/13
  • 『地面師』積水ハウスはなぜ55億円を騙し取られたのか - HONZ

    2016年10月、東京・新橋の歓楽街の一角。資産家の女性の白骨遺体が発見された。自宅と隣家のせまい隙間に、うつぶせに倒れていた。これだけでも十分きな臭いが、驚くべきことに彼女の土地は何者かによって転売されていた。 地主になりすまして、不動産をだましとる「地面師」の存在は古くて新しい。戦後の混乱期やバブル期に暗躍し、アベノミクスで沸くここ数年、再びうごめき始めた。書では、冒頭で触れた、新橋の地主怪死事件を含む6つの詐欺事件の真相に迫っている。 55億5000万円。大手住宅メーカー・積水ハウスの五反田の土地取引での被害額だ。今夏に会社が発表、刑事告訴したことで10月以降、詐欺師達が続々逮捕されている。 立地の良い土地に目をつけ、地主になりすます。書類を偽造し、不動産業者や開発業者に土地を売り払い、金を受け取る。積水ハウス事件は典型的な地面師事件だったが、多くの者は思っただろう。不動産のプロの

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    te_k000 2018/12/10
  • 『アナログの逆襲 「ポストデジタル経済」へ、ビジネスや発想はこう変わる』 - HONZ

    デジタルの先にあるアナログへ いま、さまざまな分野でアナログの魅力が再注目され、ヒットしている。たとえば、音楽でもCDの売上は落ち込む一方なのに、アナログ・レコードは世界的に人気が高まっており、売上も大きく伸びている。 こうした現象が興味深いのは、アナログ人気がけっして過去を振り返るノスタルジーではないことだ。今日のアナログ・ブームを牽引しているのは、幼い頃からデジタルに慣れ親しんでいる若い世代である。また、デジタルの最先端にあるGAFAグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などの企業も、アナログ的発想を重視しはじめている。 そう、いま台頭している現象は、「デジタルの先にあるアナログ」であり、「ポストデジタル経済」へ向かう大きな潮流なのだ。 書は、第1部「アナログな<モノ>の逆襲」で、レコード、紙、フィルム、ボードゲームの人気を通して、こうしたアナログ・ブームの実態と背景を探る

    『アナログの逆襲 「ポストデジタル経済」へ、ビジネスや発想はこう変わる』 - HONZ
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    te_k000 2018/12/10
  • 巨人の肩に乗って 『感動の創造 新訳中村天風の言葉』 - HONZ

    平成最後の年間ベストセラーリストが発表された。メディアでは、当代のベストセラーを振り返る報道が相次いでいる。ここでは、平成のミリオンセラー『超訳ニーチェの言葉』『嫌われる勇気』『漫画君たちはどう生きるか』の振り返りから入りたい。 この三冊は、偉大な哲学者(ニーチェ)や心理学者(アドラー)などの思想を、今の人に伝わるように表現を工夫したものだ。時代の空気を読み、そこに生きる生身の人間に「生きる力を与えたい」という作り手側の懸命な思いが伝わってくる。 その舞台裏を調べると、「よくぞここまで」というくらいに手がかけられている。それは、小欲(売りたい)を超えた、大慾(人々を喜ばせたい)があるからこそ、できる仕事といえるだろう。書のテーマ・中村天風は、次のような言葉を遺している。 他人の喜ぶような言葉や行いを、 自分の人生の楽しみとするという 尊い気分になって生きてごらん。  ──中村天風『盛大な

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    te_k000 2018/12/09
  • 『貧困脱出マニュアル』本当にハングリーなやつは夢を見ることも許されない! - HONZ

    貧困は罪悪であり、病である。すべての悪の根源である。 タカ大丸は英語同時通訳・スペイン語翻訳者のポリグロット(多言語話者)である。テレビ出演も多いのだが、視聴者から「見た目が怪しい通訳」と言われているそうだ。だがその実力は折り紙付きである。2015年『ジョコビッチの生まれ変わる卓』でグルテンフリーという事の概念を紹介し、その後、大ブームとなったのはご承知のとおりだ。 タカ大丸が翻訳者として優れているのは、予測能力が高いことにある。これから“来るヒト・モノ”への嗅覚はすごい。さらに優れているのは分かりやすい日語翻訳である、ということだ。翻訳でよくある「何を言っているかよくわからない」日語ではなく、すらすらと体に入ってくる。 彼は貧しい家に育った。そのうえ父親のDVが激しく、新聞沙汰にまでなったことがあるという。冒頭は書の「まえがき」の言葉だが、貧困をなくすことが彼の生涯の悲願だと

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    te_k000 2018/12/08
  • 『「日本の伝統」という幻想』時代の変わり目を前にして - HONZ

    平成の終わりが近づいている。といっても、元号が変わるだけで、生活にドラスティックな変化が訪れるわけではない。が、それでも、平成の世、もっと言えば日がたどってきた道のりに思いを馳せてしまう人は多いのではないか。受け継がれてきた行事や慣習も一つの節目だ。どんな時代が来ようと大切に守っていかねばならない、でも中にはなんかモヤモヤするものもある――もしかしたら、今こそがそうした「日の伝統」をちょっと離れて考えてみるのに最適な時かもしれない。 書『「日の伝統」という幻想』は、昨年11月末に上梓された『「日の伝統」の正体』に続く第二弾である。『「日の伝統」の正体』は、日にある伝統と呼ばれるものの多くが実は明治時代以降の発明であることを調べ分類した一冊で、発売後反響を呼んだ(詳しくは筆者のレビューと著者インタビューをお読みいただきたい)。伝統という言葉の持つ魔力を読み解かんとしたこの前作を

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    te_k000 2018/12/06
  • 『美酒復権』NEXT5のその先へ - HONZ

    「NEXT5」というグループをご存じだろうか?日酒が好きな人ならきっと一度は耳にしたことがあるだろう。ゆきの美人の小林忠彦。白瀑(山)の山友文。福禄寿(一白水成)の渡邉康衛。新政の佐藤祐輔。春霞との栗林直章。秋田の蔵元5人が2010年に結成した蔵元集団である。共同で醸造酒をつくり、酒造りを研究し、技術と精神を切磋琢磨している醸造家集団だ。 2014年からは各界の著名クリエイターとのコラボも展開し、アーティストの村上隆や建築家の田根剛らとコラボレーションした共同醸造酒を販売してきた。今年は「NEXT5 hyougemono2018」と銘打ち、山田芳裕の漫画『へうげもの』、『へうげもの』スピンオフ「激陶者集団へうげ十作」with friendsの三位一体コラボという形で、酒杯と共同醸造酒のセットを販売した。どの酒杯がついてくるかわからない、大人のガチャといった趣で、私もついつい器欲しさに

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    te_k000 2018/12/04
  • 『ルポ企業墓 高度経済成長の「戦死者」たち』墓からみた日本人と企業 - HONZ

    長いことを読んでいると、性格が素直じゃなくなる。新しいを手に取っても、「この手のテーマ、前も読んだことあるな、フン!」などとついつい思ってしまうのだ。すれっからしもいいところである。 だがこのには驚かされた。まさかこんな切り口があったとは!『ルポ企業墓 高度経済成長の「戦死者」たち』は、文字通り企業が建立した「企業墓」をテーマにしたノンフィクションだ。 聖地として知られる高野山は、年間200万人もの観光客が押し寄せる一大観光地でもある。ここを訪れた人はみな奥之院を目指す。空海御廟に詣でるためだ。 御廟までの約2キロメートルの参道の両側には、織田信長や豊臣家といった名だたる戦国大名の墓所が林立していることで有名だが(ホント物凄い数ある。さながら戦国オールスターズの趣)、実はパナソニックやクボタなどの企業墓が多数集まるエリアでもある。 金剛峰寺域内や周辺も含めると、高野山にはなんと140

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    te_k000 2018/11/29
  • 『日本4.0 国家戦略の新しいリアル』エドワード・ルトワックによる新提言 - HONZ

    米戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問で戦略家のエドワード・ルトワックの新刊である。前著『戦争にチャンスを与えよ』は紛争が長引く原因として、人道的支援という美名の下で国際社会が紛争に早期介入するためだという、口にしがたい現実を鋭く指摘して話題になったので、記憶している方も多いのではないだろうか。 前著の内容を知らず「それはどういうことだ?」と疑問に感じた人のために改めて簡単にではあるが著者の主張を解説してみると、紛争当事者たちが疲弊しきる前に国際的な圧力を加え早期講和を結ばせても、勝ち負けが判然としない上に物心双方において戦う力が余っているので小競り合いが何十年も続いてしまうといった内容だ。 人道支援のために国連などから支給された支援物資が戦闘員に横流しされた挙句にゲリラが難民キャンプなどを活動拠点するなどし、劣勢に立たされている側が完全な敗北を免れているために、負けを認めずズルズルと小

    『日本4.0 国家戦略の新しいリアル』エドワード・ルトワックによる新提言 - HONZ
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    te_k000 2018/11/28
  • 『人体はこうしてつくられる―ひとつの細胞から始まったわたしたち』は、ヒトの発生を知るための決定版だ! - HONZ

    作者:ジェイミー・A. デイヴィス 翻訳:橘 明美 出版社:紀伊國屋書店 発売日:2018-11-01 我々の体は、250~300種類、37兆個にもおよぶ細胞からできている。しかし、その複雑な構造は、精子と卵子が融合してできた受精卵たった一個からつくられてくる。受精卵が分裂し、さまざまな機能を持つ細胞へと分化し、適材が適所へと移動する。そして、相互に作用しならがさまざまな生命機能を営んでいる。 不思議だとは思われないだろうか。外部から栄養分が与えられるとはいえ、つきつめて考えれば、受精卵が単独で、最終的に極めて複雑な人体を作り上げるのである。いいかえると、たった一個の細胞の中にすべてが詰め込まれているというこだ。いったいどうなっているのか。 複雑なものが作られるとき、最初から完成品がポンとできるわけではない。そのためには、材料と、そして、比喩的な意味としてではあるが、何らかの指示書が必要で

    『人体はこうしてつくられる―ひとつの細胞から始まったわたしたち』は、ヒトの発生を知るための決定版だ! - HONZ
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    te_k000 2018/11/27
  • 『脳と時間: 神経科学と物理学で解き明かす〈時間〉の謎』全方位から迫ればわかるのか、わからないのか - HONZ

    英語で最も頻出する名詞は「time」である。 いっぽう、時間をどう定義するかについての見解は一致していない。 時間という単語にはさまざまな意味が含まれているが、文章の中や日常の会話で、異なる意味を意識して使い分けることはほとんどない。下記の文章には「時間」という単語が3つ登場する。 時間の性質についてのミンコフスキーの講演は時間どおりに終わったが、長い時間がだらだら続いた感じがした そして、3つの時間、それぞれの意味が違う、作為的な文章である。1つ目に登場する時間は「質的時間」である。一部の哲学者や科学者がうんうんと唸りながら、議論するものである。2つ目の時間は「時計的時間」である。日々の暮らしを律する基準となる時間である。3つ目の時間は「主観的時間」である。脳によって作り出されたもので、頭蓋骨の外には存在しない時間である。 時間という単語への無分別さが、謎を解き明かす邪魔になってきたが

    『脳と時間: 神経科学と物理学で解き明かす〈時間〉の謎』全方位から迫ればわかるのか、わからないのか - HONZ
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    te_k000 2018/11/26
  • 『大戦略論』戦略論の新たなる古典 - HONZ

    近年の中国の経済的・軍事的台頭、イギリスのEU離脱とアメリカ政治的混乱、そして貿易戦争 から始まった米中冷戦の時代を予感あるいは意識してか、この十年間に戦略書が、英語で書かれたものだけを見ても、続々と出版されている。その中でも出版国で評判が高く、日で翻訳されたものが二冊ある。 一つはローレンス・フリードマン(2018)『戦略の世界史(上・下)』(日経済新聞出版社、 原著は2013年刊)であり、もう一つが今、読者が手にされている書である。前者の翻訳が出るのに5年かかったのは、751頁と大著であるからだろう。書は、その半分ぐらいだが、今年の4月に出たばかりで、いくつかの書評によれば評価は高いようだ。両書とも、戦略論の分野の古典になると思う。 著者のジョン・L・ギャディスは、テキサス大学オースティン校で歴史学の博士号を取得後、オハイオ大学教授、アメリカ海軍大学校客員教授などを経て、『大

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    te_k000 2018/11/21
  • 『青線』かつて存在した非合法売春地帯を歩く - HONZ

    最近、東京新宿のゴールデン街が外国人観光客に人気だ。狭小な建物が林立する飲み屋街は世界でも珍しいという。あのような安普請が立ち並んでいるのは、ゴールデン街がかつて非合法の売春地帯「青線」であったからだ。 色街の存在は街の活気の副産物であり、都市には濃淡はあっても、その痕跡が見え隠れする。スナックや小料理屋のような外観で売買春を行う「青線」の存在は都市の裾野の広さを物語る象徴的な存在といえよう。 著者は20年間にわたり、北海道から沖縄まで、全国の青線があったとされる場所を30カ所以上歩いた。現地を訪れ、色街のわずかな残り香をヒントに往事の姿を浮かび上がらせる作業は、ノンフィクション作家としての技が光る。 青線の現状はさまざまだ。すでに旧観を失った街もあれば、細々と営業を続けている街もある。共通して、関係者の証言から浮かび上がるのは、諦念だ。行き場を失った女性たちは、青線に未来がないことを悟り

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    te_k000 2018/11/20
  • 『澤野工房物語』下駄とジャズの二刀流で、細く、長く、好きを貫く - HONZ

    人生100年時代と言われる昨今だが、一つ気になっていることがある。それは人生が長くなっているにもかかわらず、会社の寿命は案外短いということだ。 一般的に企業の寿命は30年とされているから、パラレルキャリアという言葉に注目が集まるのも無理はないだろう。しかし最も重要なのは、キャリアを2つ作ることではなく、どのように持続可能な状態を築けるかという点にある。 大阪の新世界において、下駄屋を営む澤野 由明氏。彼は創業100年を超える老舗「さわの履物店」を経営する人物だ。この下駄屋の店主がなぜかジャズ・レーベルを始め、今や世界中に多くのファンを持っているという。書はこの澤野氏のビジネス群像を描きながら、格好のジャズ入門書としての側面を持ち、さらには多くのビジネスマンの生き方指南書にもなりうる一冊だ。 下駄とジャズ、この一見無関係に思える2つのキャリアが、交わりそうで交わらない。まず最初に注目したい

    『澤野工房物語』下駄とジャズの二刀流で、細く、長く、好きを貫く - HONZ
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    te_k000 2018/11/19
  • 『いま、息をしている言葉で。「光文社古典新訳文庫」誕生秘話』なぜ現代に古典が蘇ったのか - HONZ

    この秋、出口治明さんと古典を学ぶ講座に参加している。毎月1冊、光文社古典新訳文庫のラインナップの中から出口さんがおすすめの作品を取り上げ、当日はそのにまつわるお話と(しばしば脱線するがこれが楽しい)活発な質疑応答とで、あっという間に2時間が経ってしまう。実に中身の濃い贅沢なひとときだ。 講座は全5回で、初回はダーウィンの『種の起源』、2回目はプラトンの『ソクラテスの弁明』だった。ちなみに来月予定されている3回目はヴェルヌの『地底旅行』だそう。自然科学、哲学と来てまさかのSFという流れが素敵である。 「古典を読めば、世界がわかる」と題されたこのイベント、どうしてこんなに面白いのか。もちろん博覧強記の出口さんの語り口に多くを負っていることは間違いないが、「古典新訳文庫で作品に触れる」という点も大事なポイントだと思う。実際、このレーベルのおかげで初めて最後まで読み終えることができた古典がたくさ

    『いま、息をしている言葉で。「光文社古典新訳文庫」誕生秘話』なぜ現代に古典が蘇ったのか - HONZ
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    te_k000 2018/11/18
  • 『海の歴史』未来は宇宙よりも海 - HONZ

    海から眺める人類史を一冊にしたで、海好きにはたまらない内容だ。海については、生活・科学・文化・物流・軍事などの様々な視点から数多くの書籍が出版されているが、これまで海の歴史を網羅的かつ包括的にまとめた書物はほとんどなかった。今回その壮大な歴史をまとめあげたのが、知の巨人ジャック・アタリ。壮大な世界観の歴史書を書かせれば彼ほどの適任者はいない。 書は、130億年前の宇宙と水の誕生という地球科学から始まり、動物や人類の誕生という生物史、ローマ帝国や中国王朝という権力者による海の支配史、蒸気船やコンテナ船という海を舞台にしたビジネスイノベーション、海を中心に広がる環境汚染問題と多岐にわたる題材を取り扱う。それぞれのトピックで一冊のが仕上がるほどの内容が、一冊に詰まっているのだ。 「人類の将来にとってより重要なのは、宇宙の探査よりも海だ」と著者は強調する。たしかに書のように海という視点から

    『海の歴史』未来は宇宙よりも海 - HONZ
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    te_k000 2018/11/15
  • 『フォッサマグナ』 足下に広がるミステリー - HONZ

    部活動で調子が良いときは、勉強の調子も良かった記憶がある。無理やり敷延すると、読んでいるが面白ければ、現実世界もバラ色ということになる。その時のは、現実を忘れられるものがよい。没入感の高い小説も良いが、天文や考古学など気宇壮大なも良い。今回は、そんな読書のご利益を得られる、素敵な一冊をご紹介したい。 そのタイトルは『フォッサマグナ』。日のど真ん中を南北に走る、巨大な地溝帯について書かれただ。著者は鵺(ぬえ)という怪物に例えているが、名前を聞いたことはあっても実態がよくわからないものの代表選手ではないだろうか。私は、を読む前、フォッサマグナとは糸魚川と静岡を結ぶ線(断層)のことだと思っていたが、それすらも大きな誤解だった。 私がイメージした糸静線は、フォッサマグナの西の境界でしかない。東の境界はまだはっきりとわかっておらず、一説では柏崎から千葉に至る線だとも言われているそうだ。こ

    『フォッサマグナ』 足下に広がるミステリー - HONZ
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    te_k000 2018/11/10