ブックマーク / www.ki1tos.com (11)

  • 論文の読解力レベル1〜3 - いつか博士になる人へ

    レベル1.内容がわかる 論文を読むのは暗号の解読みたいだ、と大学生のとき私は思った。 あのころ私は、研究室の机に座って一日中、論文を読んでいた。 読んでいたというか、少し読む→知らない単語が出てくる→辞書で調べる、ということをくり返していた。 辞書に書いてあるのは日語なのだけど、ときどきその日語の意味さえわからないことがあった。 気が遠くなった。 そんなとき私はよく、古代文字を読む人になって気をまぎらわせた。 ラピュタのムスカ大佐みたいな感じだ。 これをぜんぶ解読したとき、きっと聖なる光が私を天空へ導くだろう。 大学院に入ってからも、論文を読むのは大変だった。 先生や先輩たちは休憩中にコーヒー飲みながら読んでたりしたけれど、私にとってはそんな優雅なものではなかった。 でもごくたまに、自分の研究によく似た論文があって、スラスラと読めることがあった。 専門用語や実験方法が知ってるものばかり

    論文の読解力レベル1〜3 - いつか博士になる人へ
  • なんで論文なんか書くのか - いつか博士になる人へ

    私がポスドクになって今の研究室に来たとき、イトウくんという学生がいた。 彼は学部の4年生で、卒業研究をやっていた。 私と彼は研究テーマが似ていたから、よく並んで座って話をした。 キャンパスのイチョウが黄色くなった頃、 「卒研発表までもう3ヶ月しかないです」と、イトウくんが言った。 「やばいね」と私は言った。 人ごとなので、たぶんニヤニヤしていた。 優しい私は、 「そろそろ卒論も書かないといけないね」と、追い打ちをかけようとした。 すると彼は、 「論文は書かなくてもいいです」と言った。 「えっ、そうなの?」 「はい。発表すれば卒業できます」 それを聞いて私は、 「そうなんだ。楽でいいね」と、心からうらやましそうに言った。 イトウくんは、 「そうですね」と、少し困ったように笑った。 このときのことを、私は今でも後悔している。 なんで論文なんか書くのか 私が卒業研究をやりはじめたとき、当時の先生

    なんで論文なんか書くのか - いつか博士になる人へ
  • 研究で失敗するのが怖い - いつか博士になる人へ

    電車の中で、冷や汗がとまらなくなったことがある。 大学院の卒業間近の頃だ。 その日僕はいつものように一番後ろの車両の隅に立って、スマホで論文を読んでいた。 朝のラッシュは過ぎた後で、電車は空いていた。 窓から射し込んでくる光がまぶしかった。 見ていた論文は、前に一度読んだことがあった。 研究の参考にするために、細かいところを確認するだけのつもりだった。 でもある単語が目に入って、頭が一瞬真っ白になった。 僕はその単語の周りをもう一度ゆっくりと読んだ。 単語の意味を検索して、やっぱり勘違いじゃないとわかったとき、汗が背中をつたっていった。 セーターの下のシャツが濡れていく。 そのとき頭に浮かんでいたのは、先生のあきれたような顔だった。 「君ができるって言ったんでしょう? 残念ですが3月での修了は諦めてください」 想像の中で先生がそう言った。 どうしよう。あんなこと言わなければよかった。失敗し

    研究で失敗するのが怖い - いつか博士になる人へ
  • 楽しく研究の話がしたい - いつか博士になる人へ

    「なんでうちの研究室を選んだの?」と、学生に聞いたことがあります。 学生たちの答えは、 「研究テーマがとても面白そうだった」という建前から、 「研究室の場所が家から近かった」などの音まで、さまざまでした。 そんな理由の中に、 「研究室見学に行ったとき、先輩たちが楽しそうに研究の話をしてたから」というのがあって、あーわかるなぁと思いました。 学生にかぎらず、楽しそうに研究の話をしてる人たちを見ると、いつも良いなぁと思います。 そんな人たちと一緒に研究したいと、私も思います。 いま私がいる研究室には、毎年3人の学生が入ってきます。 むかし私が卒業した研究室は、毎年ひとり入ってくるかどうかでしたので、それと比べると大きな研究室です。 同期が二人もいる彼らは、わからないことがあっても、わからないなりにアーデモナイ、コーデモナイと楽しそうに話をしています。 同期がひとりもいなかった私には、それが少

    楽しく研究の話がしたい - いつか博士になる人へ
  • 質問しないことは悪いことなのか - いつか博士になる人へ

    「他に質問はありますか?」 と、先生が聞いた。 みんなは何も言わない。 「では、終わりましょう」 先生のその言葉で、研究室のセミナーは終わった。 私のいる研究室では、週に一度セミナーがある。 セミナーでは、研究室のメンバーが持ち回りで研究の進捗を発表する。 学生の発表を聞きながら、先生たちや私はときどきその学生に質問をする。 でも一緒に話を聞いている他の学生たちから質問が出ることは少ない。 そのことが私はすこしさみしい。 どうしてだろう? 別に質問しなくたっていいじゃないか。 聞きたいことがなかったってだけだし、セミナーも早く終わる。 なのにどうして私は、学生にもっと質問してほしいと思うんだろう? 質問しない理由 むかし私も、みんなの前で積極的に質問する学生ではなかった。 質問するのはめんどくさい、そう思ってた。 みんなの前で質問するのがはずかしいとか、へんなこと聞いてバカだと思われたくな

    質問しないことは悪いことなのか - いつか博士になる人へ
  • 論文を書くときに役立つサイト・文献まとめ - いつか博士になる人へ

    「論文を書くことは技術である。技術を習得するのに才能は要らない。理にかなったことを地道にトレーニングすれば、技術は確実に向上する」*参考『論文の書き方』石黒圭 私はこのことを学生の時に教わりました。 そして今日まで書いてきた論文のいくつかは、幸いにして少なくない数の人々に読んでもらうことができました。 この記事では、私が論文を書く技術を習得する上で役に立ったウェブサイト・文献を11個紹介します。 これから初めて英語で論文を書こうとする人に、特におすすめのものを選びました。 以下では、それらを目的別の項目(論文の書き方、英語の使い方、図表の作り方など)にグループ分けして紹介します。 論文の書き方 1. 理科系の作文技術 (中公新書 (624)) 木下是雄 定番の一冊。 科学論文を書くために必要な基礎知識が網羅されています。 立案の仕方 文章の組み立て方(序論・論・結び) パラグラフの作り方

    論文を書くときに役立つサイト・文献まとめ - いつか博士になる人へ
  • 英語論文が出せなくてすべてが終わる前に - いつか博士になる人へ

    英語で論文を出す」 それができないと研究がなかったことになる。 そうやって消えた研究って実は山ほどあって、もしそれが残ってたら科学は今よりもっと進んでたりするんだろうか。 英語で論文が出せさえすれば、自分の研究もいつか誰かの役に立つかもしれない。 そこでどうすれば英語で論文が出せるのかを考えてみたい。 ぼくが英語論文を出すことについて、いちばん多くを学んだのは初めて投稿したときだと思う。 ぼくならきっとうまくいくと思った修士1年目のおわり 大学院に入って1年目の冬、ぼくは先生と話し合って国際会議に論文を投稿することに決めた。 やっていた研究がうまくいった。 すぐに論文にとりかかれば投稿〆切になんとか間に合いそうだった。 時間に余裕は全くなかったけど、自分ならきっとなんとかやれると思った。(あの自信はどこへ行ってしまったのか) 投稿した論文がもし受理されたら、半年後にアメリカで行われる会議

    英語論文が出せなくてすべてが終わる前に - いつか博士になる人へ
  • なぜ博士号をとったのに大学教員にならないのか - いつか博士になる人へ

    春が来て、僕の少ないポスドク(博士研究員)仲間たちがまた何人か大学を去っていった。 一流大学で博士号を取り、一流論文誌に研究を発表した彼らが、それでも大学教員になることをやめた理由はさまざまだ。 お金だったり、子どもだったり、別にやりたいことが見つかったり。 だけどそれぞれの理由の根っこにあるものは、たぶんみんな同じだと僕は思っている。 博士課程を終えた後にいろいろな問題が降りかかってくることなんて、僕たちは博士課程に入る時に十分わかっていた。 給料が低いことも、結婚して子どもを持つことが難しいことも知ってた。 それでも大学教員になりたいと思ってハカセになった。 大学で好きな研究をやること以外に、やりたいことなんて考えられなかった。 それなのに、どうして今さら大学教員になることをあきらめるのか。 お金がない生活に嫌気がさしたから? 運命の人に出会ってしまったから? 自分の天職は他の仕事だっ

    なぜ博士号をとったのに大学教員にならないのか - いつか博士になる人へ
  • 論文を読む理由 - いつか博士になる人へ

    大学へ通う電車の中で、論文を読んでいる人を昔よく見かけた。 その頃まだ学生だった私は、そんな人たちを見つけては、「卒論の時期だな」とか、「ゼミ発表が近いのかもしれない」と、論文読んでる理由を勝手に想像してた。 「なにも電車の中で読まなくてもいいのに」と思った。 その頃の私にとって、論文を読むことは勉強だった。 電車の中で勉強している高校生をみて「たいへんだな」と思う感じ。 でも今の私には、あの人たちの気持ちがわかる気がする。 電車の中で論文読みながら、たまにニヤニヤしてた人たちの気持ちが。 論文が読めない理由 論文を読むことを教えてもらったのは、大学4年のときだった。 卒業研究のために配属された研究室で、週に一度「論文を読む会」があった。 いつも火曜日の夕方に、みんなでせまいミーティングルームに集まった。 毎回、学生の誰かが論文をプリントして配り、タイトルから読んでいく。 英語を一文読んで

    論文を読む理由 - いつか博士になる人へ
  • 人は知ってることしか見えない - いつか博士になる人へ

    大学院に入ったばかりの頃、配属された研究室で研修を受けた。 僕は先輩について回って、実験機器を使ってみたり、実験ノートのとり方を教えてもらったりした。 ある日、先輩が先生たちとミーティングをするというので見学させてもらった。 そのときのことは今でもよく覚えている。 最初に、先輩が実験でとれたデータについて説明した。 先輩の堂々とした説明を聞いて、僕はとても感銘を受けた。 ふんふんとうなずきながら、はたして自分はこんなふうに説明できるだろうか(いや、できない)と思っていた。 でも先輩の説明が終わったとき、 「なんか変だね」 と助教さんが言った。そして、 「普通はこうなるはずなんだけど」 と、他のデータとの違いを指摘した。 先輩と僕は他のデータを知らなかったから、そこが変だと気がつかなかった。 なぜこのデータは変なんだろうねと、皆でうんうん考えていると、 「3次元でグラフを描いてみて」 と先生

    人は知ってることしか見えない - いつか博士になる人へ
  • 研究室で情報共有に失敗した理由3つ - いつか博士になる人へ

    僕たちの失敗 僕が学部の4年生だったとき、研究室の先輩が言った。 「研究室のウィキを作ろう」 「なんですか?」 と僕は聞いた。 「ウィキペディアみたいに、研究室のことが何でも書いてあるウェブサイト。そういうのがあると、いちいち人に聞かなくてすむでしょ?」 「どうしたんですか、先輩……良いこと言ってますよ?」 それから、僕たちのウィキ作りが始まった。 大学のサーバーにウィキのテンプレートを置いて、ありとあらゆる資料をそこにアップロードした。 進捗報告のスライドや、勉強会で配った資料、ホワイトボードに書いたメモまで写真を撮ってウィキに載せた。 データがどんどん貯まっていくのは楽しかった。 ここに僕たちの思い出が残って、きっと後輩の役に立つ。 そう思うと嬉しかった。 でもしばらくすると、いちいちファイルを上げるのがめんどくさくなってきた。 進捗報告や勉強会が終わった後で、資料を見直し、ウィキに上

    研究室で情報共有に失敗した理由3つ - いつか博士になる人へ
  • 1