2021年夏、ライターの國友公司さんは2カ月間、ホームレスとして過ごし、共に生活する人々の生活を見つめた。あるとき路上生活を続ける國友さんは、電柱にくくりつけられたキャリーケースがたびたびあることに気づく。先輩ホームレスにその理由を聞くと、返ってきたのは意外な答えだった――。(第1回) ※本稿は、國友公司『ルポ路上生活』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。 配給を求めて都庁と代々木公園を往復 七月三十一日。 翌朝、目を覚ますと黒綿棒(編注:著者の國友氏が作中でそう名付けた長身のホームレス)が白い腕時計をしている。また誰かが金を恵んでくれたのかと思い近づくと、日焼けの跡だった。これまで付けていた腕時計の紐が切れ、時計自体もどこかで落としてしまったらしい。 いくら路上生活とはいえ時間がまったくわからないのは不便だと嘆いているので、「私はスマホがあるので時間くらいいつでも聞いてくださ