「人工知能は、いつ主観的世界を持ち始めるのか?」――ゲームAIの制作を通じて人工知能を成り立たせるための条件を哲学的に考察し、『人工知能のための哲学塾』『人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇』などの著作で注目を集める三宅陽一郎氏が、「人間の条件」をめぐる新たな哲学の可能性を探る。 人工知能に必要な哲学 僕はもう17年ほど人工知能を作っています。私の作っている人工知能は、おそらく皆さんが一度は遊んだことのあるデジタルゲーム(TVゲーム)の人工知能です。敵キャラクターやゲーム全体を進行するシステムの中に組み込まれています。 人工知能について話すのですから、まず人工知能について定義をしないといけないわけですが、驚くべきことに人工知能について決まった定義はないのです。つまるところ「知能とは何か?」という問いに答えられる人はいないのですから、人工知能の定義は研究者や開発者それぞれにあって、かつ、それら