わたしの働いている会社のイギリス支社は、ロンドンの Middlesex というところにある。入社いらい、この土地へ何百トンの貨物を送ったかわからないが、あいかわらず、この地名にだけはどうしても慣れない。ミドルセックス。わたしは、ここの住所を書類に書いたり、パソコンでタイプしたりするとき、ひとりごとのように、かならず呟いてしまう。 「Middle... Sex」 いったい、ここの住人はどんな気持ちなのだろう。すっかり慣れきって、もはや麻痺してなにも感じなくなっているのだろうか。よくわからない。ただし、小学生たちはおおよろこびである。見てきたわけではないが、これだけは確実にいえる。クラスでは、ばかな男子が黒板の前に立って、自らの住む土地の名前を、何度もうれしそうに大声で叫ぶのだ。そうしたようすが、ありありと想像できる。 「俺たちの住んでるのは、ミドル、セーックス!!」 「ちょっとー、やめなさい
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