私のストレンジな楽器偏愛話は、さらに続く。 立花ハジメがプラスチックス解散後、現代美術のイディオムを発揮していたソロ時代というのがあって、その中で特に私をいたく関心させたのは、アルプスシリーズという発明楽器群であった。アルプスという名前は確か、当時YENの所属アーティストの間で高山キャンプが流行していて、『アルプスの若大将』の加山雄三から取ったんだと記憶しているが、そもそも加山雄三自身が相当重病な楽器フェチである。彼のクルーザー「光進丸」の船中には、まだ日本には数台しかなかったフェアライトCMIがあるという、まことしやかな伝説があった。『宝島』時代に私は、加山雄三の事務所に正式に取材をオファーして断られているから、それは逆説的に「真実だった」という裏付けになるだろう。最近出た、ランチャーズを現代に復活させた“ハイパー・ランチャーズ”はきっと、その時代からの加山雄三のテクノ愛の所産なのだと思