食べ終わったアイスの棒にはアイスの味がしみ込んでいるような気がして、もう食べられる部分は残っていないのに、その木の棒をいつまでもかじっていたものだ。Doleのフルーツバーみたいなタイプは特に。意識を集中させてやれば実際木の味に混じってほのかに果汁のようなあまい味がするような気もして、歯型でぼこぼこになるまで噛んだ。 そういうわけで、じゃないけれど、なんとなく、食べ終わったアイスの棒をくわえたりする。上の前歯と下の前歯とで軽く木の棒を挟んで、口を「イーッ」ってかたちでキープする。こうすると頬の表情筋が鍛えられて、上手に笑顔ができるようになると聞いたことがある。表情の乏しい私がまっさきに身につけるべき筋肉だ。…ところで、唾液というのは日ごろからこんなにもせっせと生産されているものだろうか。油断すると、横向きに棒をくわえた唇の端から唾液がこぼれそうになる。これもひとえに笑い慣れていない顔面ゆえか