生物統計学への前口上:歩み始める前の心構えとして たとえ確率論や統計学をまったく学んだことがなくても、日常生活を営む上で、実は私たち人間は必ず確率的あるいは統計的な推論を行なっています。「生物統計学(biometrics)」は、人間が生物界を観察したときに気づいたデータの変動から結論にいたる推論をするための道具として整備されてきました。「統計学」と聞くと、多くの学生はいやな数式やらめんどうな計算を条件反射的につい思い出してしまいます。けれども、生物統計学の核は「統計」ではなく、むしろ「生物」にあります。みなさんが日常的に取り組んでいるさまざまな生物学的問題 —— 生態・行動・遺伝・進化・生理などなど —— がまずはじめにあるわけです。生物統計学はこれらの生物学的問題から発する推論問題を解く道具を提供します。ですから、生物学畑の統計ユーザーにとって必要なのは、どのような統計手法が自分にとって