名実ともに、百貨店が小売業の王様だった戦前、大陸に広がる巨大百貨店チェーン「三中井(みなかい)百貨店」があった。 1905年に朝鮮の大邱に1号店を構え、並み居る競合を抑えて急成長。朝鮮に12店舗、満州に3店舗、そして中国に3店舗を構えた。 日本では百貨店のチェーン店すら珍しかった時代だ。 1929年「三中井呉服店案内」より。実際にはすでに百貨店だった(京都府立京都学・歴彩館所蔵「京の記憶アーカイブ」より) 働く従業員数は約1万人とも語られる。年間売上高は最盛期で1億円、現在の5,000億円ほどあったといい、当時の三越をも圧倒する規模だった。 しかし終戦とともに、その存在はこつ然と消えてしまった。幻の巨大百貨店だ。 支店の一つだった釜山店(国際日本文化研究センターより) 三中井は「近江商人」の発祥地の一つ、滋賀県の五個荘(現在の東近江市)の商人たちの英知が結集したという。 この「近江商人」を
気分が高揚する「躁状態」と、気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返す双極症(※1)。「調子が良い」と感じる躁状態はコントロールしづらく、またその後にやって来るうつ状態との“気分の落差”から、安定的に働き続けることに難しさを感じる方もいるのではないでしょうか。 精神保健福祉士や公認心理師の資格を持ち、働きたいと望む双極症の方の支援を行う松浦秀俊さんは、27歳のとき、「双極症II型(軽度な躁状態とうつ状態を繰り返す状態)」の診断を受けた当事者でもあります。専門知識と自身の経験から学んだ「双極症と付き合いながら無理なく働く」ためのヒントを伺いました。 (※1)「双極性障害」「躁うつ病」は、現在の診断分類「DSM-5-TR」の日本語訳では「双極症」と呼称されています お話を伺った方:松浦秀俊さん 精神保健福祉士、公認心理師。株式会社リヴァ 双極事業部 部長。1982年生まれ。大学卒業後、複数の仕事で休
小さい子どもを育てながら働くワーママの「カバンの中身」、一体何が入っているのでしょうか? 「通勤バッグ」と「マザーズバッグ」の中身をそれぞれ見せてもらったら、忙しい中でも仕事と子育てをスムーズにこなすためのヒントが見えてきました。 第2回はmoeさんのカバンの中身です。 moeさんプロフィール ・共働きで、0歳10カ月の息子との3人家族 ・東京・千駄ヶ谷で古着屋を経営。店舗営業は週3〜4日だが、在宅で行う事務作業も多く決まった休みはほとんどなく週6〜7日働くことも ・満員電車が苦手で職住近接を重視しており、通勤時間は徒歩20分。通勤のストレスを減らしているほか、通勤バッグをなるべく軽くして疲れないような工夫もしている 👜ワーママのカバンの中身🎒 第1回:マザーズバッグも通勤バッグも身軽に。 週5出社で4歳&2歳を育てる工夫 第2回:この記事です 千駄ヶ谷で古着屋を営んでいるmoeです。
誰かの「やめた」ことに焦点を当てるシリーズ企画「わたしがやめたこと」。今回は文筆家・モデルの伊藤亜和さんにご寄稿いただきました。 朝早くからの仕事には寝坊せず行けても、用事がない日はいつまでも寝てしまい、「なぜずっと寝ていてはいけないのか」と「早起きできないと人としてダメな気がする」の間で葛藤してきたという伊藤さん。 自分自身への期待値を見直し、「早起きができる自分」への幻想を手放すまでの過程を振り返っていただきました。 *** 朝が嫌いだ。アルバイトで長く水商売をやってきたせいだろうか。送迎車の中、窓の外の空が徐々に白んでくるのが分かると、泣き出したくなるような気持ちになった。 朝日は化粧の崩れた汚い顔を容赦なく照らす。太陽が完全に上る前に、私は一刻も早く布団に潜り込まなければならなかった。まるで『鬼滅の刃』に出てくる鬼だ。背後から迫る日の出が車のスピードに追い付いて、私は目を瞑(つむ)
子育てしながら働くワーママ&ワーパパって毎日どうやって乗り越えているの……? 夫婦それぞれ、どんなタイムスケジュール&ルーティンで、どんな工夫をしているのかを教えてもらう本シリーズ。 第4回はゆるりさんに登場いただきました。 ゆるりさんプロフィール ・総合病院で総務事務の管理職を務める42歳。定時は8:45〜17:15のフルタイム勤務だがしばしば1時間ほどの残業あり。在宅勤務なし ・妻(44)は自宅近くにある介護事業所の管理職(ケアマネージャー)として働いており、同じく毎日出社している。9:00〜18:00のフルタイム勤務だが、朝は定時より早く職場へ向かう ・小学6年生(12歳)の長女との3人暮らし 👨👩👦 育児中・共働き夫婦のスケジュールを教えて! 👨👩👧👦 第1回:フルタイム妻&フリーランス夫の「ルールは決めてもフレキシブルに」 第2回:小学1年生&年少を時短勤
気にしやすい性格ゆえ心身の調子を崩し、「休職」ではなく「退職」を選んだKasumiさん。 「むやみに退職を勧めるわけではないけれど、私の場合は仕事や職場とすっぱり距離を取る必要があった」と話すKasumiさんに「疲れたら休んでもいいしどんな働き方をしても大丈夫」と思えるようになるまでの“10カ月の空白期間”を振り返っていただきました。 職場での評価=自分の全て、だと思っていた 自分だけが、いつまでも溶けない氷みたいだ。 職場にいる時、そんなふうに感じることがあった。もともと気にしやすい性格で、社会に出てからは「仕事」より「職場」に慣れようといつも必死だった。 人間関係で何か気になることがあると、それがささいなことでも大抵その日は眠れない。休日まで職場のことで頭がいっぱいになって、周りの人たちのようにプライベートを楽しむことができない。「気にしない」ができない自分のことを、駄目だと思っていた
初めての妊娠や出産で「仕事と両立できるのだろうか」などの不安を抱える中、何も変わらないように見える夫にモヤモヤする……といった悩みを抱いていませんか。 自身も妊娠・出産の経験を経て同じ悩みを抱き「男性が当事者として関わりづらい現状」を実感したという作家の小野美由紀さんと夫のAさんに、“パートナーと一緒”に妊娠・出産に向き合うためのヒントを伺いました。 肉体的にも精神的にも大きな変化を要する妊娠・出産のつらさを抱え込まないために、夫婦はそれぞれどうすればいいのでしょうか。 身体が変化するのは女性だから「男性には分からないだろう」と決めつけていた まずは、小野さんの妊娠が分かったときのことを聞かせてください。妊娠の経過や今後について、なにか不安はありましたか?小野美由紀さん(以下、小野) 一番不安だったのは仕事のことです。フリーランスなので産休や育休はないし、これからどうやって仕事を続けていく
海は元来、人間にとっては危険なもの。溺れたり、海水温が低かったりすればあっという間に死が待っている。 海難事故も数多く、2022年の水難者は1640名。そのうち727名は死者・行方不明者だ。 2022年、26名全員が死亡・行方不明になった知床観光船沈没事故や、2014年に韓国で304人が犠牲となった、セウォル号の沈没事故も記憶に新しい。 そんな絶体絶命から身を守るための道具こそ、救命器具だ。筆者がそれに思いを馳せるようになったのは、業界のパイオニア・日本救命器具による「生存指導書」にある、“生きぬくために”を見てからだった。 “生きぬくために” “望みを捨てるな、救助は必ずやってくる。” 遭難、漂流と人生最悪の極限ではあるが、 強い精神力で3日は生き延びよう。 あとは何10日も生きられる。 海は不毛の砂漠ではない。 食料の魚、プランクトンもある。 また、魚肉の50~80%は真水である。 船
入園申し込みシーズンとなる秋〜冬に先立ち、夏ごろから本格化するケースが多い「保育園の事前見学」。職場復帰に向け保活をする上で、園の雰囲気や設備をチェックできる重要な機会となります。 今回は3人の保活経験者に、いつごろ見学をスタートしたか、どうやって情報を収集したか、見学の際のチェックポイントは何かなど、それぞれの「保育園見学」について教えてもらいました。 また参加者はみなさん“コロナ禍での保活”も経験。感染症対策のため、見学の取りやめや規模縮小などを実施している保育園も多い中、現場ではどのような対応が取られていたかについても伺いました。 ※取材はリモートで実施しました *** <<参加者プロフィール>> きみきみさん:首都圏在住。ゲームプラットフォームの開発運用をしており、勤務形態は裁量労働制。子どもは1歳0カ月。2020年8月に保育園見学をはじめ、3施設を見学し、2021年4月から私立の
文・イラスト ちょっ子 どうも、イラストレーターのちょっ子です。私は夫と息子(現在小学4年生)との3人家族。夫は息子が生まれる少し前に独立し、自宅でデザインの仕事を始めました。私も出産後そのアシスタント兼イラスト担当として共に働くことになり、以来約10年にわたり、夫婦2人での在宅ワークが続いています。 コロナ禍による在宅ワークの普及で、同居する家族やパートナーと家で仕事をするようになった方もいらっしゃると思います。そんな中で「オンラインMTGなどで発話しづらい」「相手の存在が気になって集中できない」など、同じ空間で仕事をするゆえのストレスを感じることもあるでしょう。 コロナ禍にそういったストレスをため込んだことで夫婦仲が悪化するケースも増えていると聞き、10年ほど前の私たちのことを思い出しました。私たちも在宅ワークを始めてしばらくは、同じようにストレスを抱え込み、家の中が険悪なムードになっ
ますます不安定さを増す現代日本においては、初めての就職活動の時点からキャリアや生き方に「一貫性」を求められることが少なくありません。しかし、仕事においてもプライベートにおいても、常に確固たる自己を求められるような風潮に、息苦しさを感じている方もいるのではないでしょうか。 小川さやかさんは、東アフリカのタンザニアを中心に商人たちの経済活動を研究する文化人類学者。著書の『「その日暮らし」の人類学~もう一つの資本主義経済~』などでは、未来に縛られず「今」を生きる商人たちの姿を報告しており、その日本とは対照的な彼らのあり方は、私たちが当たり前だと感じている「働き方」や「人間関係」を捉え直すヒントを提供してくれるかもしれません。 そこで今回は、日本の状況と照らし合わせながら、タンザニア商人たちの柔軟性あふれる仕事観や人間関係の捉え方についてお話を伺いました。 ※取材はリモートで実施しました 仕事にこ
「あなたのためを思って言っているんだよ」「これは若手の仕事だから、先輩の手が空いていても新人がやるべき」ーー。職場で上司や先輩といった立場の強い相手からかけられた言葉に「イラッ」や「モヤモヤ」したことはないでしょうか。でも、うまく言い返せずさらにモヤモヤしてしまう……。もしかすると、相手から「ずるい言葉」を投げかけられているのかもしれません。 森山至貴さんは差別やクィア・スタディーズを専門とする社会学者。著書『10代から知っておきたいあなたを閉じこめる「ずるい言葉」』(WAVE出版)では、よく口にする、または耳にするけれどなんとなくモヤモヤしたり、イラッとしたりしてしまう言葉を「ずるい言葉」と定義し、「ずるい言葉」の実際の事例と対処法を、言葉の背景に隠されている問題も含めて解説しています。 今回森山さんには、職場でかけられがちな「ずるい言葉」に対し、なぜそんな言葉が使われるのか、そこにはど
妊娠が判明したとき、喜びとともに「仕事」との両立で不安を覚える方は少なくないはず。特に安定期に入るまでの「妊娠初期」は、「無事にお腹の中の子供が育つのだろうか」という心配がつきまとうとともに、職場にいつ妊娠を報告するか悩んだり、つわり(悪阻)などの身体的変化で業務に支障をきたしたりと、仕事の面でも悩みの種はつきないかと思います。 今回は、妊娠出産を経て仕事に復帰した3人の先輩による座談会を実施。妊娠初期に体調や仕事でどのような悩みを抱いていたかや、つらいつわりへの対処、職場への報告時期とその方法についてなど、さまざまな角度から「妊娠初期と仕事」について話を伺いました。 *** <<参加者プロフィール>> 西口さん(仮名):29歳。WebサービスUI/UXデザイナー。2社目である現在の会社に転職したのち、2018年秋に女児を出産。2020年初夏に時短で復職。 山田さん(仮名):33歳。Web
文 生湯葉シホ 働き方や生き方を見つめ直すとき、なにかを「やめる」選択が自分にとって転機になった、という方は少なくないのではないでしょうか。 「やめたい」という思いが生まれた理由。その決断をするまでに至る過程。実際に「やめた」ことで、自身にどんな変化があったのか。悩んだ末の決断が、自分にとってどんな影響を及ぼしたのか。そんな誰かの「やめた」に焦点を当てるシリーズ企画「わたしがやめたこと」をお届けします。 今回は、ライターの生湯葉シホさんに寄稿いただきました。 ***昔から、ほんとうに言われたくないことを言われると、とっさに笑ってしまう癖があった。自覚している性格上の欠点とか、容姿のこととか、家族のこととか、分かってはいるけれどどうしようもないんだよなそれ、ということを指摘されると、決まって情けなくニコニコしてしまう。 当たり前だけど、こちらが笑っていると「あ、嫌がってないんだな」と思われる
皆口裕子さんという声優をご存じでしょうか。 あまりにも有名な声優ですが、念の為お仕事のほんの一部をご紹介すると― 1980年代 ・『ねるとん紅鯨団』のナレーション ・アニメ『YAWARA!』主人公・猪熊柔役 1990年代 ・アニメ『ドラゴンボールZ』のビーデル役 ・アニメ『美少女戦士セーラームーン』のセーラーサターン役 2000年以降 ・ゲーム『ラブプラス』の姉ケ崎寧々役 ・ゲーム『グランブルーファンタジー』のソーン役 僕は年代的に『YAWARA!』の声をドキドキしながら聞いていました。 いかにもアニメ~!っていう作った声じゃなくて、同じクラスの好きな子が喋っているかのような自然な……あ、僕の話はどうでもいいですね。 とにかく、時に可愛く、時に妖艶な「奇跡の声」それが皆口裕子さんなのです。 どうも、ライターの倉沢学です。 今回は、声優・皆口裕子さんに、声優の世界について色々とインタビューし
日々、仕事や生活をしていると、不満や違和感をおぼえることは少なくないと思います。しかし、そこで実際に気持ちを言葉にするのは意外と難しいもの。「みんなは普通にやっているのに、自分だけ主張するのは『わがまま』ではないか」と、内なるストッパーが作動してしまう方も多いのではないでしょうか。 富永京子さんは、社会運動論を専門にする社会学者。著書の『みんなの「わがまま」入門』では、「自分あるいは他の人がよりよく生きるために、その場の制度やそこにいる人の認識を変えていく行動」を「わがまま」と定義し、わがままを言うことの大切さについて書かれています。 今回富永さんには、自分の気持ちを言葉にしづらい時代的な背景を起点に、実際に職場などの身近な場所で「わがまま」を言えるようになるための心構えや日々のトレーニング方法を伺いました。 私たちが「わがまま」を言えないのはなぜ? 自分のなかに不満や違和感が芽生えたとき
文 北村紗衣 武蔵大学准教授であり、さまざまな芸術作品をフェミニスト批評という観点から読み解いた『お砂糖とスパイスと爆発的な何か 不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門』の著者・北村紗衣さんに、1935年に公開されたフランス映画『女だけの都』を紹介いただきます。 作中で描かれる男女の関係性は、2020年時点の日本社会にも共通する点が多いのだそう。今を生きる私たちと85年前の作品との共通点や、そこから見えてくるものとは? ※ 編集部注:以下には、作品内容に触れる情報が含まれています 管理職に就く女性がまだまだ少ない日本の現状 女には何もできない、専門的な仕事や政治などは男のものだ、という考えは長きにわたり、男性のみならず女性を縛ってきた。現在の日本にもそうした風潮が強くあり、国会議員の女性比率は先進国で最低レベル*1、管理職に占める女性の割合もG7最下位*2だ。 これは日本の女性が努力し
グラビアアイドルの倉持由香さんは、その戦略的な自己プロデュース術で“グラドル界”を駆け上がっていきました。アピールポイントである「自分の尻」を活かした写真をSNSに多数投稿する自らを「尻職人」と称しますが、その仕事ぶりはまさに職人。極貧時代を経て、「いつかグラビアで売れてタワーマンションに住む」という目標を実際に達成しています。そして、2019年7月からはもともと好きだったというeスポーツでチームのプロデューサーにも就任しました。 そこに至るまでの戦略は、働くすべての人々が真似したいエッセンスの宝庫。自分の強みの見つけ方やメンタルの保ち方、目標を達成するための考え方について語っていただきました。 登れる山がないなら、自分で作るしかない 倉持さんといえば、Twitterで「#グラドル自画撮り部」や「#尻職人」のハッシュタグをヒットさせて以降、ビジネス系のメディアにもよく出演されていますね。
文 千紘 「やなこと全部忘れて騒ごうぜー!」 ――全部忘れたいほどのやなことは、別にないんだけどなぁ~。 アイドルのコンサートでこんな煽りを初めて聞いたとき、思わず心の中でツッコミを入れてしまった。しばしば、たくさんのアイドルから似たような言葉を聞く。お決まりのフレーズになっているのは、アイドルが仕事や家庭といった、日常からの「現実逃避」の象徴として成立してきたということだろう。 でも、私にとってはアイドルこそが一番の「現実」なので、どうにもこの言葉には違和感を覚えるのだ。 私の嫌なことは、仕事や恋愛で起こることではなく、コンサートのチケットが取れなかったり、新曲で推し*1の歌唱パートが少なかったりすることなんだけどな、と本気で思ってしまう。 なぜアイドル鑑賞という趣味が、私の中で一番の現実となって、喜怒哀楽を生産する頂点に君臨してるんだろうと、自分のルーツを振り返ってみた。すると、自分の
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