2013年、安倍晋三元首相は、労働組合の要求水準を上回る賃上げを企業に要請した。その結果、2015年は2.4%の賃上げを達成したが、これは場当たり的な対症療法にすぎない。国民は「官製春闘だ」と冷笑した。 一方、岸田文雄首相は「新しい資本主義」を構築すると昨年の就任後に宣言した。彼が期待するのは、労働市場が逼迫し、インフレの影響がもはや避けられないところまできている現状で、従来よりも「有機的な春闘の成功」を演出することだ。日本銀行が長らく実現できずにいた、「インフレ率2%」という目標にも近づけるかもしれない。 岸田首相が推進する新しい資本主義は富の再分配が中心だと、政治ジャーナリストの伊藤惇夫は指摘する。 「この政策が功を奏するかどうかは、賃上げの成功にかかっています。夏の参議院選挙の自民党の勝敗は、『春の結果』に左右されるかもしれません」 伊藤は今年の春を「値上げの春」と呼ぶものの、楽観は