公開日: 2014-03-15 タグ: bicycle 夏目漱石の作品に「自転車日記」というタイトルの短編がある。留学先のロンドンで自転車に乗り始めた時のことを、自虐的かつユーモラスな口調で語ったものだ。西洋近代の中心地で漱石が出遭ったのは、いったいどのような自転車だったのか。そして彼は、この文明の産物とどんな風に格闘したのだろうか。19世紀の終わり頃の資料などを頼りに、彼のサイクリング体験の実像を探ってみよう。 35歳の自転車デビュー 漱石の「自転車日記」に綴られているのは、「西暦一千九百二年秋」、今からおよそ110年前の出来事だ。彼は既に満年齢で35歳になっていた[1]が、下宿の「婆さん」から強く勧められてその「命」に従うまで、自転車に「乗って見た」ことは全く無かったらしい。 図1: 漱石の下宿はThe Chase 81番地(地図の印のところ)、自転車の入手先は近所の「ラヴェンダー・ヒ
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