物心ついたときには、父親と母親はすでに不仲だった。 ふたりが会話しているところを見たことはほとんどなく、たまに口を開けば口論だった。 どうしても連絡の必要があるときは、父も母も子供である自分をとおして伝言した。 これはとても苦痛だった。ストレートに伝言を伝えれば、両親とも自分のことを棚にあげて「どうして直接言わないんだ!」と機嫌を悪くする。 だから「父さんが(母さんが)言ってたよ」ではなくて、「○○があるらしいよ」とか、ぼかして伝える必要があった。 自分がどちらかと出かけると、もう一方の機嫌が悪くなった。 どちらかと話をすれば、もう一方の機嫌が悪くなった。 常に両方の機嫌をバランス良くとらなければいけなかった。そうしなければ、家の中で生きていけなかった。 どうして離婚してくれないのか。話もしたくない相手と、どうして一緒に暮らし続けているのか。 子はかすがいという言葉が大嫌いだ。かすがいにさ
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