高野秀行の魅力は高い親和力だと思っている。ノンフィクション作家は好奇心が強いのは当たり前。しかし相手のことを無視して、自分の取材のためだけに突き進み、相手に嫌われるまでになるのは、作品としてすごいと思っても、ちょっと嫌だ。 大学時代に怪獣さがしに行ったデビュー作『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)からその態度は全く変わっていない。好奇心はいっぱいで、何か異質なもの、奇異なもの、知りたいものに果敢にアプローチしながら、最初はどこか奥ゆかしい。相手や同行する仲間に気を遣い、ちょっとしたことでも“エライ”“すごい”“感動した”と子供よりも素直なのだ。そしていつの間にか輪の中に入ってしまい、取材なんかはそっちのけで、自分から楽しんでしまう。それが彼の文章からにじみ出ているのだ。 新刊『移民の宴』でもその様子は変わらない。本書では「隣に住んでいる外国人はいったい何を食べているのか?」という素朴な疑問