江戸最大の遊郭があった吉原(東京都台東区)に昨年9月、遊郭や色街専門の書籍を扱う「カストリ書房」がオープンした。趣味で遊郭について調べていた渡辺豪さん(39)が、ゼロから本の世界に飛び込んだ。「好きが高じて」の店かと思いきや、ビジネスチャンスを見いだしていた。 吉原の入り口「吉原大門」近くの路地。古い建物の1階にカストリ書房はある。10平方メートル足らずの売り場には、遊郭や赤線について明治時代以降に書かれた古本や復刻版が所狭しと並ぶ。「近現代の色街資料館」といった趣だ。 「こんな不便な所に本屋があっても、わざわざ来る人はほとんどいない」。開店前、渡辺さんは周囲にそう言われたという。 IT企業に勤めていた時、旅行で各地を巡ると、遊郭や赤線の跡地に出くわすことがしばしばあった。スナックが密集していたり、民家とは異なるデザインの廃虚があったり。そんな体験が続くうち、旅行の目的地が「遊郭の跡」に変