私は、中高年になってから失業して「引きこもり」になった男性数人の相談・診療をしたことがあります。「失業して仕事が見つからないのが問題で、病気ではない」と言います。確かにもっともなところもあって、精神科医としてできることに限界を感じます。ただ、ご家族の受け止め方も、本人の気持ちにとって大変に重要ですので、そのことを考えるために、2人の方のケースをご紹介します。 母親から相談があったケースです。本人は嫌がって受診していません。彼女の話によりますと、息子さん(49)は高卒後に部品メーカー(200人規模)に就職し、25年勤務。工場の製造ライン班長でした。独身です。 10年ぐらい前から東南アジアの安い商品に押され、会社経営が悪化。リストラが始まり、給料が高く、IT(情報技術)に弱い中高年が希望退職のターゲットになりました。彼は経営者から「次の仕事はありません」と言われ、退職したのです。 1年以上、職