天皇陛下は、皇太子時代以来54年ぶりにフィリピンを訪問した。この旅に託したメッセージは「貴国の国内において日米両国間の熾烈な戦闘が行われ、(略)貴国の多くの人が命を失い、傷つきました。このことは、私ども日本人が決して忘れてはならないこと」という大統領主催晩餐会での答辞に凝縮されていたように思える。 太平洋戦争でフィリピンでは51万8千人の日本人が命を落とした。外地では最大の数だ。食糧も兵站も乏しいなかの悲惨な戦いについて、日本では多くの記録が残され、小説や映画にもなった。多数の慰霊碑がフィリピン国内に建立された。だがフィリピン側の犠牲について思いを寄せたり、悔悟をつづったりした例は限られている。