ブックマーク / himaginary.hatenablog.com (20)

  • 数学の皮を被った学界政治 - himaginary’s diary

    10日エントリの末尾では、Economist's View経由でポール・ローマーによるシカゴ学派批判に触れたが、Economist's Viewがローマーによるまた別の批判を紹介している。 以下はそこからの引用。 The point of the paper is that if we want economics to be a science, we have to recognize that it is not ok for macroeconomists to hole up in separate camps, one that supports its version of the geocentric model of the solar system and another that supports the heliocentric model. As scientis

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  • コント:ポール君とグレッグ君(2013年第11弾) - himaginary’s diary

    前回はクルーグマンがマンキューのNYT論説に正面から反応したが、今回はマンキューがクルーグマンのNYT論説(邦訳)に正面から反応した。 グレッグ君 今日のNYT論説でポール君は最低賃金引き上げを支持する論陣を張り、雇用への負の影響は大したことは無いと述べた。残念ながら、ポール君はこの分野の研究から恣意的な選択をしている。例えば、この研究は今の話と関係があるのだが、その要旨から引用してみよう: データによって然るべき比較対照グループを特定する手法を用いた新たな実証によると、雇用への負の効果は従来の研究に比べて大きいという結果が得られ、十代の雇用弾力性は-0.3近くになる。我々は、ある人の賃金引き上げが別の人の雇用喪失につながるというトレードオフを最低賃金がもたらすことを実証結果は依然として示しており、政策当局者が最低賃金引き上げの決定を実施する際はこのトレードオフを念頭に置いておく必要がある

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    tsuka_ryo
    tsuka_ryo 2013/12/06
  • 適応的市場仮説 - himaginary’s diary

    昨日、クリス・ディローによる合理的期待と適応的期待の折衷案を紹介したが、それは10月22日エントリで触れたアンドリュー・ローのファーマとシラーの折衷案に似ている。そこで、改めてInstitutional Investor記事からローの折衷案を紹介した箇所を引用してみる。 Lo has proposed another theory, which he calls the Adaptive Markets Hypothesis, in which markets are neither efficient nor irrational, but some combination of both. Using the principles of evolution to describe stock market behavior, he notes that markets wax and

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    tsuka_ryo 2013/11/12
  • 完全な真空としての合理的期待 - himaginary’s diary

    今年のノーベル賞をとば口に、合理的期待に関してMark ThomaがThe Fiscal Timesに書いている。以下はその概要。 合理的期待革命以前に経済学者が用いていた適応的期待では、期待は過去の情報に基づいてのみ形成されるため、トレンドが変化するという情報が入ってくる場合でも期待が変化しなかった。また、FRBがインフレ目標を高めるといった政策変更があっても、労働者の賃金要求はあくまでも過去のインフレ率に基づくことになっていた。 合理的期待はその問題を回避するため、過去の情報だけでなく、起こりうるショックや将来の政策変更、およびそれらの出来事がマクロ経済変数に与える影響、といったすべての情報を取り込んで人々が期待を形成する、とした。 合理的期待が妥当な時もある。例えば親子の遊びで、親が、脇の下、膝、脇の下、膝、…の順で子供をくすぐる場合を考えてみよう。子供が単純な適応的期待に基づいて直

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  • 非政治化された数学のせいで経済学は駄目になった - himaginary’s diary

    というブログ記事をヘリオットワット大学のファイナンス数理学者ティム・ジョンソン(Tim Johnson)が自ブログ「Magic, maths and money/The relationship between science and finance」に書き、Economist's Viewでリンクされたほか、Gavin Kennedyが紹介している(原題は「How economics suffers from de-politicised mathematics」。ちなみにKennedyの紹介記事のタイトルは「Mathematical Truths Do Not Make Untrue Assumptions in Economics True」)。 そのエントリでジョンソンは、ゲーデルの不完全性定理によるヒルベルト・プログラムの挫折と、その後のニコラ・ブルバキ(実体はフランスの数学者グ

    非政治化された数学のせいで経済学は駄目になった - himaginary’s diary
    tsuka_ryo
    tsuka_ryo 2013/09/23
    "経済学界は、数学界の内部では議論や懸念が存在することを問題にすることもなく、定理やモデルのお墨付きを数学的であるという理由だけで受け入れた。"
  • 計量経済学は衰退しました - himaginary’s diary

    最近流行りのデータマイニングの手法を経済モデルに応用した事例は無いのか、とふと思い立ってぐぐってみたところ、この論文が引っ掛かった。以下はその要旨。 This paper examines the efficacy of the general-to-specific modeling approach associated with the LSE school of econometrics using a simulation framework. A mechanical algorithm is developed which mimics some aspects of the search procedures used by LSE practitioners. The algorithm is tested using 1000 replications of each

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  • インドは超大国になるのか? - himaginary’s diary

    昨日のエントリで取り上げたインドの歴史家Ramachandra Guhaが、この論文でそう問い掛けている(Mostly Economics経由)。 以下はその冒頭部。 More than sixty years ago, in the summer of 1948, the Indian nation, then newly-born, was struggling for its very survival. It was pierced from the left by the Communists, and pinched from the right by Hindu extremists. And there were other problems aplenty. Eight million refugees had to be resettled; provided with

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    tsuka_ryo
    tsuka_ryo 2012/07/30
    "Guhaは、そうした改革は地道に一歩ずつ進めるべきであり、何らかの総体的な構造転換で一気に問題が解決できる、という幻想を持つべきでは無い、と警告している"
  • ハイエクの罠に落ちた国際決済銀行 - himaginary’s diary

    金融政策の限界を訴えた国際決済銀行(BIS)の年次報告書を、ジョン・テイラーや池尾和人氏が称賛する一方、ライアン・アベントが詳細な批判を繰り広げている。 その中でアベントはBISのことを、ハイエク的(ないしメロン的)な清算主義、と批判しているが、そのアベント論説を受けてDavid Glasnerが、BISはハイエクが40年近く前に捨てた立場に立脚している、と論じたのが面白い。 そこでGlasnerは、ノーベル賞受賞後間もない1975年4月9日のハイエクのAEI講演での以下の発言を引用している。 You ask whether I have changed my opinion about combatting secondary deflation. I do not have to change my theoretical views. As I explained before, I

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    tsuka_ryo 2012/07/07
  • ゲーム理論は直接的には現実に応用できない - himaginary’s diary

    とイスラエルのゲーム理論の大家アリエル・ルービンシュタインがThe Browserインタビューで述べている(Mostly Economics経由)。 その内容を簡単にまとめると以下の通り。 ゲーム理論というネーミングで、フォン・ノイマンは数学だけではなく広報宣伝での天才ぶりを発揮した。そのネーミングにより、何か単純なものが経済危機や核抑止力政策といった複雑な状況に応用できるという幻想を人々に抱かせた。自分の見方は同僚より極端かもしれないが、ゲーム理論は現実に直接応用できるという主張には与しない。 自分が比喩として良く用いるのは論理学。論理学は哲学や数学の興味深い一分野ではあるが、それがより良い人生を送る助けになるという幻想を抱いている人はいないと思う。良き裁判官は論理学を習得している必要は無い。論理学はコンピュータ科学の発展に役立ったが、友人との討論や、裁判官、市民、もしくは科学者として与

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    tsuka_ryo 2012/06/11
  • 何が国家の繁栄を決めるのか? - himaginary’s diary

    下記のダロン・アセモグルとジェームズ・ロビンソンの新著の内容が、MITニュースで紹介されている。 Why Nations Fail: The Origins of Power, Prosperity, and Poverty 作者: Daron Acemoglu,James Robinson出版社/メーカー: Currency発売日: 2012/03/20メディア: ハードカバー購入: 13人 クリック: 175回この商品を含むブログ (12件) を見る 以下は同記事の概要。 米国のように繁栄する国家がある一方で、貧困に留まる国家もある。また、古代ローマやソ連のように強国なのに崩壊する国家もある。アダム・スミスやマックス・ウェーバーから今日の学者に至るまで、多くの学者がこの問題に取り組んできた。 アセモグルとロビンソンが出した回答は政治体制。包括的な(inclusive)政治体制、即ち、政

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    tsuka_ryo
    tsuka_ryo 2012/03/25
    アセモグルとロビンソンによる約15年の共同研究を続けてきたその成果。ウェーバーやジャレド・ダイアモンドへのつっこみとか、ジンバブエのケースとか。
  • スティグリッツの構造改革論 - himaginary’s diary

    スティグリッツがヴァニティ・フェアに書いた大恐慌および大不況に関する記事(H/T Mostly Economics、Economist's View)が波紋を呼んでいる。 以下はその抜粋。 ...the inability of the monetary expansion to counteract this current recession should forever lay to rest the idea that monetary policy was the prime culprit in the 1930s. The problem today, as it was then, is something else. ... The underlying cause was a structural change in the real economy: the wide

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  • 近代経済を形作った忘れられた本 - himaginary’s diary

    ダニ・ロドリックをはじめとして製造業ならびに産業政策の重要性を重視する人は少なからずおり、ブログでも何回かそれについて取り上げてきたが(例)、歴史的観点からその重要性に焦点を当てた研究が出た。 Translating Empire: Emulation and the Origins of Political Economy 作者: Sophus A. Reinert出版社/メーカー: Harvard University Press発売日: 2011/10/17メディア: ハードカバー購入: 1人 クリック: 16回この商品を含むブログを見る ハーバード・ビジネス・スクールのサイトでこのの著者インタビューが掲載されている(Mostly Economics経由)。以下はその要旨。 A British merchant's long-forgotten work, An Essay on

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    tsuka_ryo 2011/11/20
  • 現在の米国は90-00年代の日本とは違う - himaginary’s diary

    として、ジョン・テイラーが以下の3つの相違点を挙げている。 1990年代、そしてとりわけ2000年代初めの日はデフレだった。1999年から2003年に掛けてGDPデフレータは下落した。米国ではそのような長期のGDPデフレータの下落は近年見られていない。 当時の日のマネタリーベース増加を自分が支持したのは、(M2+CDといった)マネーサプライの伸び率を復旧するためだった。自分が日銀のアドバイザーだった当時に示したように、貨幣成長率の低下が1990年代の日のデフレと経済の低成長の大きな原因だった。自分が財務省にいた当時に是認した2000年代初めの日の金融政策の目的は、あくまでも貨幣成長率を復旧することにあった。その点で、不動産証券価格や株価を一時的に押し上げることをしばしば正当化理由としている今日のFRBの量的緩和とは訳が違う。自分が日銀のアドバイザー当時に書いたこちらの見解を参照のこ

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  • 有意と非有意の差は有意とは限らない - himaginary’s diary

    アンドリュー・ゲルマンの9/9ブログエントリと、同日付けガーディアン紙記事( Chris Blattmanブログ経由)が同じ論文を取り上げている。 その論文の内容とは、 ある効果が5%水準で有意 別の効果は5%水準で非有意 よって2つの効果は異なる という誤った推論*1を行った論文が、神経科学のトップ5の雑誌に掲載されたうち半数に達した、というもの(具体的には、513の論文を調査し、そうした誤りを行う可能性のあった157の論文のうち79論文が実際に間違えていた、との由)。 ゲルマンは、1世紀近くに亘って続いてきたこうした誤謬問題が、なぜ最近になって改めて脚光を浴びているのか、と訝っている。 ガーディアン紙記事では、正しい手順を踏んで改めて両者の差の検定を行うと非有意になることが多いので、研究者がわざとそうした推論を行っている可能性もある、という穿った見方を示し、そうした腐敗よりは無能の方が

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    tsuka_ryo
    tsuka_ryo 2011/09/15
  • どうして人々や機関はやるべきと分かっていることをやらないのか - himaginary’s diary

    というタイトルの論文をハーバード大経済学部教授のデビッド・カトラー(David M. Cutler*1)が書いた(Mostly Economics経由;原題は「Why Don’t People and Institutions Do What They Know They Should?」)。 そこで彼は、ピッツバーグ近郊のアレゲニー総合病院(Allegheny General Hospital)が中心静脈関連血流感染(Central Line Associated Bloodstream Infections)を防ぐ方策を手順化して劇的な効果を上げ、多額の費用を節約することに成功したにも関わらず、他の病院がそれに倣わなかった、という事例を冒頭で報告している。そして、なぜ人々は、やるのが正しいと分かっていて、それをやることのコストも低く、かつ、やることが自らの利益になることも分かっているこ

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    tsuka_ryo 2011/09/02
    この問題に取り組むに当たっては以下の3点を理解することが必要1人々が社会的環境をどのように受け止めているか2意見が割れる時、集団的意思決定はどのようになされるか3相異なる行動理論の意味
  • 否定的結果の論文誌 - himaginary’s diary

    何だかThe Unbirthday Songのような逆説的な感を受けるが、否定的結果を出した論文を集めた学術誌についてFrances WoolleyがWCIブログに書いている。 そのエントリの冒頭に取り上げている「European Journal of Negative Research Findings」は「The Laurie Taylor Guide to Higher Education」というのネタだそうだが、以下の論文誌は実在するという。 Journal of Negative Results in Biomedicine Journal of Articles in Support of the Null Hypothesis(心理学) Journal of Negative Results: Ecology and and Evolutionary Biology Woo

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    tsuka_ryo 2011/08/14
  • 反ケインズ主義とは何を意味するのか? - himaginary’s diary

    というブログエントリを7/19にジョン・テイラーが書いている。 彼は4/19エコノミスト記事で反ケインズ的と呼ばれたが、当時その記事に対し、代表的なニューケインジアンであるテイラーを反ケインズというのはおかしいではないか、とDavid Altigやクルーグマンが批判を浴びせた。このエントリは、その一件に関する彼なりのまとめである。なぜ3ヶ月経って突然その話を蒸し返したかというと、Russ Robertsのポッドキャストインタビューでその話を持ち出されたのがきっかけとの由。 テイラーはまず、ケインズが経済学で現実社会を描写するに当たって強調したことと、無視したことを挙げている。 強調したこと 価格や賃金の硬直性 無視したこと フォワードルッキングな予想、インセンティブ、成長効果 このうち、前者の価格や賃金の硬直性を取り入れることの必要性については、テイラーは全面的に認めている。 次にテイラー

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    tsuka_ryo
    tsuka_ryo 2011/07/29
    テイラーの考える政策…金融政策におけるテイラールールや財政政策における自動安定化装置といった、裁量とは正反対のルールに基づく政策。価格硬直性を取り入れた合理的期待モデルの使用は反ケインズ主義と矛盾せず
  • 欧米が150年掛けて構築して20年で破壊したもの - himaginary’s diary

    についてペルーの経済学者エルナンド=デ=ソト*1が書いている(Mostly Economics経由)。 During the second half of the 19th century, the world’s biggest economies endured a series of brutal recessions. At the time, most forms of reliable economic knowledge were organized within feudal, patrimonial, and tribal relationships. If you wanted to know who owned land or owed a debt, it was a fact recorded locally—and most likely shielded fr

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  • 自己批判しない経済学者たち - himaginary’s diary

    先日、有志各位の努力で邦訳が完成したアセモグル論文だが、少し前にNaked Capitalismで取り上げられていた。ただ、残念ながらあまり良い取り上げられ方ではなく、既成の経済学批判の対象の一つとして扱われている。 エントリを書いたイブ・スミス(Yves Smith)*1は、その中で、経済学者たちの今回の危機に対する自己反省の乏しさを槍玉に上げている。 彼女は、経済学者たちはこの問題について集団思考に囚われていた、というロバート・シラーの説明に納得せず(テニュア=終身在職権を持っているのに何を恐れることがあるのか?+もしいち早く構造変化を予見したらむしろ地位を確立するのではないか?)、以下のような喩えを使ってその責任を追及する。 But if a doctor repeatedly deemed patients to be healthy that were soon found to

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    tsuka_ryo 2011/02/01
    アセモグル「2008年危機」ひいては経済学者全体の問題点について
  • 「デフレの罠」への素朴な疑問 - himaginary’s diary

    先週末にはサムナーとクルーグマンの論争が経済ブロゴスフィアで話題になったが、そのきっかけは、サムナーがセントルイス連銀のブラード総裁の論文を批判したことにあった。今日のエントリでは、その論文の前半部を足掛かりに、サムナーとはまた異なる観点から、デフレの罠が当に問題かどうかを少し考えてみたい。 その論文「Seven Faces of "The Peril"」でブラードは、Jess Benhabib、Stephanie Schmitt-Grohé、Martín Uribeの3人による2001年の論文「The Perils of Taylor Rules」(以降BSU論文)を敷衍し、いわゆる「デフレの罠(deflationary trap)」の危険性とその回避方法について論じている。 論文の第一節「The "peril"」では、BSU論文に基づき、政策金利をある種のテイラールールに則って定めた

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    tsuka_ryo
    tsuka_ryo 2010/08/02
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