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『週刊金曜日』に部活の地域移管について書いた。 文科省とスポーツ庁が主導して、公立中学校での部活の「地域移管」が進められている。来年度からまず運動部の地域移管が始まり、文科系部活についても来月には提言がまとめられるという。 勝利至上主義に毒された指導者が生徒の人格を否定するような暴言を吐き、体調を崩すほどの長時間拘束を強いる「ブラック部活」はない方がましだと私は思う。 一方で、教員にとっての負荷も過大なものになっている。部活の顧問になって休日返上して指導に当たった教員が心身を病むという事例も報告されている。 生徒も苦しみ、教員も苦しんでるのだから、そんな部活はアウトソースすればいいというのがこのたびの「地域移管」の理由だ(と私は思っている)。 むろん文科省はそんなことは言わない。地域移管は「少子化による廃部で、子どもの選択肢が減っているので、もっと多様な選択肢を提供する」「専門家による指導
サンデルによるメリトクラシー批判が話題になっているようなので、このnoteにおいても日本の教育格差について自分が見た事情をお話させて頂こうと思う。 以下の文章は2014年に書いたブログ記事の改稿だが、教育格差はその当時から現在まで引き続き拡大し続けている。今はもっと酷いだろう。 ちなみにこの記事は自分が教育という営みに絶望する前に書かれたものだ。 教育困難者に向けた教育ボランティアを3年ほど行った結果、いまの自分は大学受験を経由した階級上昇は「困難」ではなく「不可能」であると考えている。 その考えに行き着いた経緯については、こちらの記事を読んで頂きたい。 ・「底辺からでも努力すれば逆転できる」という神話の嘘 ー ー 数年ほど前にヒットした「ドラゴン桜」という漫画をご存知でしょうか。 「経営破綻寸前の超底辺高校の生徒2人が様々理由から東京大学を目指す」というストーリーで、TVドラマ化や小説化
なぜ勉強しないといけないのか 勉強する目的を考える。 一番の目的は、権力に騙されないため 知識がないと「原発は安全です」とか、「世界的にもトップレベルの科学者が安全を保証しています」などと言われて、ころっと騙されてしまう。ダマされたくはない。 原発の燃料であるウランや原発の廃棄物として大量に発生するプルトニウムは、どうにも処理のしようがない。一旦ウランを濃縮してしまったら、もうどうしようもない。濃縮ウランを薄めて自然に戻す方法は無いのだ。このような基本的な知識は必要だ。 そして、「絶対安全」なんてものは世の中に存在しない、ということもちょっと考えればわかることである。ミスをしない人間も、故障しない機械も存在しないのだから。 多くの人が知っていれば、その声は大きな力になる。だから、多くの人が知識を持って考える力が得られるようにするために学校は存在する。 そして、権力に騙されないためには、基本
ちょっとまえ、面白い記事をツイッターで拝見した。 企業の採用担当が、面接時に見ているポイントを端的に表現したものだ。 曰く、「事実と意見を分けて説明できるかは圧倒的に重要で、これができない人はかなり厳しい。」とのこと。 クローズな勉強会などで話をしたら好評だったのでブログに書きました / 面接時に見ているポイント – VOYAGE GROUP techlog https://t.co/64ehNAYLAi — Masanori KOGA (@makoga) October 29, 2019 彼がこれを重視する理由としては 「事実と意見を分けて説明するのがうまい人が書いた障害報告書は読みやすい」とある。 確かに読みやすい文章を書く人は、知的能力が高い事が多いので、採用の精度は良いのではないかと推測する。 ただ、この文章を読んで感じるのは、 「なぜ「事実」と「意見」を区別して話せない人がいるの
2009年05月01日02:21 カテゴリ哲学、マインドセット 【PR】女性のやる気、仕事力・営業力がアップする! 営業・セールスを頑張るすべての女性へ トップセールスレディ朝倉千恵子のワークショップはこちら 生命保険の営業でこれを知らないと致命的!? 売れない保険営業がハマっている落とし穴。これを知らねば永遠に這い上がれない「保険営業成功の黄金律」 ≫保険はこれだけ話せば契約がとれるって本当なのか・・ -Sponsors- 恥をかくのが怖い人でも、恥をかくのが好きになる方法 恥をかくことが好き、という人はあまり出会ったことがない。一方で恥をかくことを必要以上に恐れることで好機を失うというのはよくあることだと思う。私もそうだった。 どうすれば恥をかかずにすむのか、よりも恥を気にしなくなるのかという方向で考えてみよう。さらには自ら進んで恥をかきたくなってくるという話。 まず、恥ずかしいという
特定秘密法に反対する学者の会が12月28日13:00から学士会館で開かれました。 集英社の伊藤直樹くんが音声を記録して文字起こしまでしてくれましたものに佐藤学先生が朱を入れてくれた「決定版」が送られてきましたので、改めてご紹介します。 引用などされる場合はこちらの「決定版」からされるようにお願いします。 お手間をかけた伊藤くんとスタッフのみなさんに改めて感謝致します。では、どうぞ。 2013年11月28日特定秘密法に反対する学者の会 佐藤学 : お忙しい真っ最中だと思いますが、今日はこのように多数、お集まり頂き、ありが■2013年11月28日特定秘密法に反対する学者の会■ 佐藤学(学習院大学教授): お忙しい真っ最中だと思いますが、今日はこのように多数、お集まり頂き、ありがとうございました。最初に、ここに並んだ者の自己紹介をさせて頂きたいと思います。私、本日の司会役を務めます学習院大学の
前回からちょうど一月空いてしまいました。無音をお詫び致します。 でも、忙しかったんです。ほんとに。 本2冊出して、テレビの収録が3日あって、新聞雑誌の取材を8回受けて、講演を5回やって、対談2回やって、合気道の合宿に2回行って、新幹線に12回乗って、原稿を5本書いて、ゲラ一冊分見て、仲人一回やったんですから。日記書いてる暇なんか、ありませんでした。 でも、ようやく最悪の時期は過ぎて、ここ2日ほどはちょっとほっとしております。その隙を突いて三島くんから「凱風館日乗更新されてませんけど・・・」という督促がありましたので、とりあえず一つ書くことにします。 でも、一月前のことなんか遠い過去のことで、もう思い出せませんので、とりあえず今日書いた話について。 これはある雑誌からの依頼で、「租税回避と共同体」について長いものを頼まれました。8000字ほど書いて、書き上げて「やれやれ」と肩をぽんぽん
國分功一郎『スピノザの方法』はデカルトの思想とスピノザの思想を対比した上で、ある驚くべきテーゼを発見している。デカルトの思想が他者への説得を試みるのに対し、スピノザの思想は他者への説得を試みない、というのだ。 本書の問いは、人はいかにして真の観念・真の認識に到達できるのかという「方法」の問題から始められている。まず、方法は精神にとって外的な「道具」と見なされた。しかし、そのような方法を探究するにはまた別の方法が必要であることから、懐疑論者(ソフィスト)によって無限遡行の問いを付されてしまう。そこで、デカルトは方法を精神にとって内的な道具と見なした上で、懐疑論者を説得する外的な「標識」を求めた。決して疑い得ないコギト、すなわち「我思う、ゆえに我あり」がそれである。さらにデカルトはコギトから、決して私を欺くことのない神の存在を証明しようとした。二つのア・ポステリオリな証明と一つのア・プリオリな
朝日新聞の求人欄の上に日曜に出ている「仕事力」というコラムのための取材を受けた。 その中で、「適性」とか「天職」とかいう言葉がどれほど若い人たちの労働意欲を損なっているかについて語った。 今、仕事を探している若い人たちの言う「自分の適性にあった職業」というのは、装飾を削ぎ落として言えば、「自分の手持ちの資質や能力に対していちばん高い市場価値がつけられる職業」のことである。 交換比率のいちばんいい両替機会を求めているのである。 ありていに言えばそういうことである。 そういう仕事をみなさん探している。 交換比率のいちばんいい両替機会を求めてうろうろするのは、やればわかるけれど、あまり賢いことではない。 でも、消費者マインドを刷り込まれた人たちは、「限られた持ち金でどれだけ有利な取引をするか」、費用対効果にしか興味がない。 それは大学で教えているとよくわかる。 学生たちは単位や資格や学士号の「市
先日、兵庫県庁での研修会で講演したときの講演録が出来ました。うちうちで配布するものなので、ここに再録しておきます。 中身は「いつもの話」ですけれど、まあ、いいじゃないですか。いつもの話で。 では、どぞ。 はじめに 内田でございます。 ただ今ご紹介にありましたとおり、このすぐ先の神戸市東灘区住吉というところに去年の11月に自宅兼道場を作りまして、そちらで合気道の稽古をしております。 合気道は始めて37年になります。神戸女学院大学の合気道部を21年前に立ち上げたとき、同時に社会人の団体も創設しました。そちらの会は公共施設を借りて、西宮市の中央体育館や芦屋市の青少年センター柔道場でやっておりました。このたび宿願の専用道場をつくりまして、今は毎日稽古三昧の生活をしております。 今、学塾というご紹介もありましたけれど、大学でやっておりました社会人対象の大学院のゼミの聴講生たちから、引き続き開講してく
2月17日 久しぶりの休日は、一年ぶりのバリ島バカンス。 ほんとうに休みなく働いている。まさか退職した後にこれほど忙しくなるとは思っていなかった。 4月から「毎日が夏休み」になるかと思っていた。 実際には「毎日が月曜日」という悲惨な暮らしがそれから始まった。 退職したら、半年ほどは完全休養して、旅行にいったり、ふらりと温泉に逗留したり、映画を観たり、レヴィナス論を書き継いだり、カミュの「反抗的人間」の翻訳をしたり、多田先生のイタリアの講習会に行ったりして幸福な人生を過ごす予定だった。 そんなことを夢見て、大学での最後の数年を歯を食い縛って耐えたのである。 でも、夢見たことはひとつも、ひとつも実現しなかった。 結局一年間ひたすらディスプレイに向かって締め切りに追われて原稿を書き、講演をし、取材を受け、対談をし、ゲラを直し、「残念ながら、もう新規の仕事を容れる余裕はありません。貴意に添えず申し
大晦日なので、恒例の「個人的重大ニュース」をまとめることにする。 重要性とは関係なくランダムに思いついたまま列挙する。 (1) 定年退職した 2011年3月末日をもって21年間勤めた神戸女学院大学を定年退職した。ほんとうに楽しい大学での楽しい仕事だった。 だから、「あっというま」に21年経ってしまった。 むかし近所にいた「ジョジョ」ちゃんという女の子が小学校時代の6年間のことをまったく記憶していないとカミングアウトしたことがある。 「あまりに楽しかったので、何も覚えていない」のだそうである。 なるほど。 そういうものかも知れない。 (2) 退職したら暇になると思っていたら、全然ならなかった 4月からは「毎日が夏休み」だと思って、いろいろなことを企画していた。 ひとつは初夏にイタリア旅行に行くこと。 山本浩二画伯とふたりで車を借りて、北イタリアをドライブして、きれいな街があったら、そこに泊ま
子守康範さんのMBSラジオ『朝からてんこもり』に三ヶ月に一度出演している。今回は「冬の出番」。 日曜に迫った大阪ダブル選挙の話は放送の中立性に抵触するデリケートな話題なので、微妙に回避。 子守さんが今朝の新聞記事から、ユニクロの柳井会長兼社長の「グローバル人材論」を選んだので、それについてコメントする。 柳井のグローバル人材定義はこうだ。 「私の定義は簡単です。日本でやっている仕事が、世界中どこでもできる人。少子化で日本は市場としての魅力が薄れ、企業は世界で競争しないと成長できなくなった。必要なのは、その国の文化や思考を理解して、相手と本音で話せる力です。」 ビジネス言語は世界中どこでも英語である。「これからのビジネスで英語が話せないのは、車を運転するのに免許がないのと一緒」。 だから、優秀だが英語だけは苦手という学生は「いらない」と断言する。 「そんなに甘くないよ。10年後の日本の立場を
10月17日の平松邦夫市長を励ます会で「おせっかい教育論-教育基本条例の時代錯誤について」という講演をした。 講演録はそのあと『橋下主義を許すな!』という本に採録された(香山リカ、山口二郎、薬師院仁志との共著、ビジネス社)。 選挙の応援のための、いささか「煽り」の入った本なので、手に取るのを控えた方も多いと思うが、私の書いていることはいつもの原則論である。 教育現場にドラスティックで急激な変化は馴染まない 平松市長から教育関係の特別顧問をと委嘱されて、お引き受けした時に、「大阪市の特別顧問に任ず」という委嘱状を頂きました。紙一枚もらって終わりだろうと思っていたら、いきなり「さあ、これから記者会見です」と言われました。そんな話聴いてなかったので、何の準備もしていない。いきなり記者会見に連れ出されて、「内田さんの顧問としての抱負を」と尋ねられました。何も考えていなかったのですが、そういうときの
広島学院の文化祭で、中高生1000人ほどをお相手に講演。 文化祭のキックオフイベントである。 高校生を講堂に集めての講演は何度か経験があるが、中学生ははじめて。 でも、関係ない。 子供たちは「彼らの知性に対する敬意」が示される限り、その限界まで理解力を押し上げてくる、というのは私の揺るがぬ確信である。 「子供にもわかるように話す」人間の話を聴いているうちに知性的、情緒的な成熟が果たされるということはない。 一期一会。1000人の少年たちが私の話を70分間静かに聴いて下さるというのである。 このチャンスを逃すことはできない。 君らの理解力を限界まで高めないと「ついてこられない」話をしようではないか。 というわけで、まず国際関係における「移行期的混乱」についてお話しする。 来年のアメリカ大統領選挙の見通しについて、中国の産業空洞化について、EUの瓦解の可能性について、プーチンの資源外交と北方領
ある媒体から若者の労働観についてアンケートを受けた。 みじかい回答を期待していたはずだが、やたら長くなってしまったので、たぶんこのままでは掲載されないだろう。 自分としてはたいせつなことを書いたつもりなので、ここに転載して、諸賢のご叱正を乞うのである。 Q1.現在、世界では、経済格差(世代間格差ではなく、金持ちとそうではない人との格差)や社会への不満に対して、多くの若者たちが声を上げ、デモを起こし、自分たちの意見を社会に訴えようと行動しています。翻って日本ではここ数十年、目に見える形での若者の社会的行動はほとんど見られません。これだけ若者たちにしわ寄せが行く社会になっているのに、そして政策的にも若年層に不利な方向で進んでいるのに、若者たちはなぜ、社会に対して何かを訴えたり行動したりしないのでしょうか? それは特に不満を感じていないからなのか、それともそうした行動に対して冷めているのか。ある
民主党の代表選挙があった。 一国の総理大臣を決める選挙なのだが、あまり盛り上がらない。 私自身も選挙結果にそれほど興味がない。 日本の政治過程は成熟期にあり、誰が総理大臣になっても、それほど違いが出ないようにシステムが作り込まれているからである。 安全と言えば、安全だし、不活性的と言えば、不活性的である。 東日本大震災以来の官邸の対応について「スピード感がない」という批判が繰り返されたが、たぶん「スピード感がない、だらだらしている」というのが成熟期に入った政治プロセスの特徴なのだろう。 「スピード感がない」というのは、いまの政治を否定的に論評するときの流行語になっている。 同じように「まったなし」というのが財政危機や景況についての形容の定型になっている。 状況は「まったなし」で切迫しているのであるから、「スピード感のある」対応が必至である、という言明は整合的なように聞こえるけれど、こういう
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