その人は私よりもずっと年上で、その業界ではとても有名な絵師さんだった。 経歴もそうだけど、一番有名にしていたのは私生活。 昼間からとにかく呑みまくっていた。 難病を患い、片方の足がほとんど動かなくなっていて、移動時は補助用の杖を使わなければならなかった。 奥さんがいて、私と同い年の娘さん(高校生)がいた。 だけど、同性の恋人がいた。 メンタルクリニックに通院していて、薬を飲んでいたけれど、とても効果があるとは思えなかった。 迷彩柄のジャケットに金髪。 真っ赤な杖を持って歩くその姿はとにかく目立った。 『素面で絵が描けるわけないだろ!!』 絵を回収にきた担当の方にそういって怒鳴っていた。 気難しいうえに、非常識。 自分で自分を追い詰めているようにしかみえなかった。 でも、私は嫌いではなかった。 その人が描く世界がとにかく好きだった。 こんなメチャクチャな人だったのに、常に仕事がきれることなく