【サンフランシスコ=渡辺浩生】バイデン米大統領は15~17日のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、地域の平和と安定に果たしてきた米国の歴史的指導力は不変とのメッセージの発信に努めた。ただ、1年後の米大統領選に向け激しさを増す党派対立と自身の支持率低迷が、外交の求心力を弱めていく可能性がある。 「今後数年間、世界の歴史の多くはアジア太平洋で書かれる」。バイデン氏は16日の夕食会でこう訴えた。 太平洋の「玄関」にあたるサンフランシスコでは1951年、サンフランシスコ講和会議が開かれた。米国は日本やオーストラリアなどとの安全保障条約にそれぞれ署名し、自由と民主主義に基づく第二次大戦後の地域秩序と同盟ネットワークが産声を上げた。 だが、それから72年が経過。首脳会議期間中の一連の外交からにじんだのは、米国一国のパワーで太平洋の平和と安定を追求できないとのバイデン政権の判断だ。 米国は中