1944(昭和19)年、神戸市で呉服商を営む中国福建省出身の華僑らが警察から拷問を受け、数人が亡くなった。歴史に埋もれかけた事件を後世に伝えるため、生存者の証言が記された連合国軍総司令部(GHQ)の報告書を神戸華僑歴史博物館(同市中央区海岸通3)の研究会が翻訳し、冊子「戦後神戸華僑史の研究」に収めた。報告書は戦後のBC級戦犯裁判用とみられ、容疑者が罪に問われなかった経緯も確認できる。戦時中の警察による華僑弾圧の一端を伝える貴重な資料だ。(金井恒幸) 報告書はGHQが調べた内容をまとめている。国会図書館で見つけた研究者から「戦後神戸華僑関係資料を読む会」世話人の安井三吉・神戸大名誉教授が写しを譲り受け、同会メンバーの四方(しかた)俊祐(しゅんすけ)・四天王寺大講師が翻訳した。 報告書によると、華僑11人がスパイ容疑で拘束され、虐待などで拘留中や釈放後に6人が死亡。生存者5人も自白を強要された